現役看護師5人が本音で語る 耳鼻咽喉科の実態

耳鼻咽喉科に興味のある看護師のみなさんこんにちは

耳鼻科の仕事内容ってご存知ですか?
耳鼻咽喉科といえば、耳・鼻・喉を中心に、カゼやインフルエンザ、甲状腺疾患などの鎖骨から上の病気を扱う診療科です。
ここで働く看護師は、点滴や採血はもちろん、診察介助やオペ介助、患者さんのイビキ対策まで、様々な看護が必要になります。

ここでは、現役看護師の体験談から、具体的に耳鼻科がどんな業務を行っているのかを紹介しています。
耳鼻科を少しでも知るきっかけになれば幸いです。

オペ後の急変対応

スキルアップできた急変処置

N.Aさん(34女性)
勤務先:耳鼻科クリニック

私は12年目の看護師です。
病棟を結婚と出産のために辞め、復職に近所の耳鼻科クリニックを選びました。

数か月前に初めてオペ介助をしたときの出来事をお話します。

副鼻腔炎のオペの後のことです。
タンポンを除去していたら、急に患者さんが口から泡を吹いて倒れてしまったんです。
耳鼻科の領域での急変は初めての経験だったので、なにもできませんでした。

先生が、「椅子倒して寝かせて!!」と指示をくれたので、なんとかそれだけはできました。
その時は、声をかけたら意識が戻りました。
先生からは、「初めてでビビっただろうけど、今後はさっと動けるように復習しといて。」とアドバイスをもらうことができました。
復習してわかったのですが、その日に直面したのは迷走神経刺激反射でした。

その時以来、オペの介助をするときは、常に周囲に何があるかをチェックするようになりました。
たとえば、ベッドの有無、処置の椅子はリクライニング可能かどうかをチェックします。
椅子がリクライニングできるものなら、診療前に実際に必ず倒して確かめます。
患者さんの発作の瞬間はいきなりやってきます。発作に直面するのは、経験者でもかなり焦ります。
自分が混乱していると、椅子の操作を間違えて必要な処置もできないようなパニックに陥ることが考えられるからです。

そして、二度目の副鼻腔炎のオペに入った時。
以前と全く同じ状況で、タンポン除去の際に患者さんが口から泡を吹いて倒れてしまいました。
悪夢がよみがえりました。

私の心臓は口から飛び出そうなくらいバクバクでした。
でも、落ち着いて椅子のリクライニングを倒し、臥位にして声をかけました。

しかし、今回は意識の回復がありません。
泣きそうになるのをこらえながら、深呼吸して、復習したことを頭の中に巡らせました。

まず、ルート確保して、指示された補液をしました。
それで意識の回復がなければ心臓や脳疾患を疑わなければなりません。
今回は、補液をした段階で患者さんの意識が戻りました。
心底ほっとしました。

先生からは、「的確な処置だった。今後も頼む」と言ってもらえて、すごくうれしかったです。

患者さんの急変に直面するのはものすごく怖いです。
でも、こうやって一つ一つ看護を覚えていくんだな、と実感した瞬間でした。

今回は、副鼻腔炎での迷走神経刺激反射に対応することができるようになりました。
今後もいろいろ経験を積んで、何が起こっても冷静に対応できる看護師になれるように頑張ろうと思っています。

オペ器具の準備忘れ

私が失敗したこと。

I.Rさん(29女性)
勤務先:耳鼻科クリニック

私が勤務していた耳鼻科クリニックでの出来事です。

当時結婚準備のために婚約者と共に暮らそうと引っ越しました。
そのため、5年勤めていた病棟から耳鼻科クリニックに転職しました。

勤めて半年目に先輩から要請があり、オペ介助につきました。

それまでオペ介助の経験などなかったのですが、「そろそろオペも手伝って」と言われたので、介助につくことになりました。

それは、子どもの扁桃摘出のオペでした。
扁桃摘出は、幼少の子にすることが多いです。
介助について驚いたことは、特に出血しなかったことです。

子どもだと組織が修復するのも早いからほとんど出血しない。
これが大人なら、扁桃も大きいから大量出血もありうる、と先輩から教わりました。
大人のオペの時は、吸引瓶や吸引チューブなどがセッティングされているか要確認。
なければ準備してオペに入るように言われました。

それから数か月経ち、大人の扁桃摘出のオペの介助に入ることになりました。
しかし私は、出血に備えた器具の準備を忘れていました。
婚約者との関係がうまくいかず、精神的に参っていた時期でした。

たまたまオペ前に備品を確認に来た先輩にひどく怒られました。
「今日のオペは、大人の扁桃摘出ですよ!?患者さんを殺す気ですか!?」と。

私は、先輩に怒られたことで冷静になり、「今日はプライベートなことで悩んでいて、器具の準備を忘れていました。すみません。」と謝りました。
先輩からは「プライベートの問題はどんな時も仕事には関係のないことです。」と言われ、結局オペ介助をさせてもらえませんでした。
もし、このままオペに入って出血があれば、患者さんを窒息させていたかもしれません。

看護師の状態が悪いと患者さんに影響する。
プライベートも仕事も、しっかり区別していかなくてはいけないと思わせてくれてた出来事でした。
婚約者とは、無事結婚できました。

猛スピードの診察

慣れるまではつらかった…

I.Rさん(32女性)
勤務先:耳鼻科外来

内科からオペ室をへて、耳鼻科外来へ転職しました。
家庭の事情で1年しか勤めませんでしたが。

私としては、結構楽な職場に勤められてよかったと思っています。
耳鼻科の仕事内容は、オペ介助をカンタンにしたような感じでした。

診察の時に医師に器具を渡したり、鏡を温めたりします。
レントゲンの操作は多いですが、撮る方向が限られているし、カメラもゼリーつけてから声掛けするくらいなので、すぐにできます。
辞めてから知りましたが、レントゲンは看護師が扱っちゃダメですよね。
勉強不足だったです。(反省)

仕事を覚えるまでは、1か月あれば問題ないんじゃないかな。
でも、スピードは速かったです…。
身体が勝手に動くくらいじゃないと、仕事にならないくらい忙しかったです。

看護師が任されている検査もありました。
主に聴力検査なのですが、7種類の音を聞いてもらって検査をします。
耳鳴りを持っている方や音が定まらない患者さんの時は、音が聞こえているのかいないのかを判断するのに結構苦労しました。

他にも看護師がする検査はありますが、特に難しいことはありませんでした。スイッチオン、設定入力と順番にやっていけば誰でもできる単純な作業だったので。
全体的に慣れればルーティンワークばかりだし、誰でもできると思います。

でも、うちの病院では、半年で5人辞めました。
辞めた人はみんな、気が早くて短気な先生のスピードについていけなかったみたいです。
単純作業でも、スピード重視だとすごくハードです。

幸い私は、診察介助に慣れましたが。
ただ、家では入職してから、毎日診察介助のイメトレを繰り返していました。
それでも、1か月半の間には、「遅い」と怒られることもありました。
医師に怒られると、先輩にも「もっと早くできるようにならないの?」と指摘をされるので、ダブルパンチでつらかったです。
3人いる医師の中には、指示をしなくても、雰囲気で次の器具を出せ、という人もいましたので、その医師に当たった時には泣きそうでした。
もちろん、必死に先生の行動を観察して、雰囲気についていけるようにはなりましたが。

何とかスピードについていけるようになったのが、1か月半くらい経ってから。
2か月以上スピードにいついていけない看護師は、事実上のクビ宣言をされるんです。
それで、半年で5人も辞めてしまう結果になってしまっています。

耳鼻科の介助は、同じことの繰り返しなので、大体2ヶ月もすれば、仕事についていけるようになりますよ。
スピードを除けば自分の仕事はラクだったと思います。
診察スピードの速い医師とあうんの呼吸で診察介助ができるのは、結構燃えてました。楽しかったですよ。

患者さんへの対応策

急性扁桃腺炎の看護

R.Dさん(25女性)
当時の勤務先:耳鼻科病棟

これは、助っ人で耳鼻科病棟へ行った時のお話です。

私は、普段外科病棟で働いている4年目の看護師です。
このときは、耳鼻科病棟で3か月お世話になりました。

耳鼻科で担当したのが、急性扁桃腺炎の患者さんたちでした。

最初に驚いたのが、急性扁桃腺炎って耳鼻科の領域?ってことです。
まあ、化膿性の扁桃腺炎だと化膿部を除去することがあるからそうなのかなあ、とも思いましたが。

急性扁桃腺炎はすごい痛いらしく、患者さんからは、「カミソリで切られるくらい痛い。痛み止めが欲しい」って言われたこともあります。

扁桃腺の肥大、化膿は気道の閉塞につながることがあります。
看護としては主に観察ですが、発熱時の看護をしながら、気道の閉塞が無いか注意していました。
患者さんによっては夜間帯に呼吸音がすごくなる人もいます。
呼吸音がおかしい人には、医師に患者さんの容態や呼吸音の様子を伝えて、ネブライザーでアドレナリンを出すこともありました。

呼吸がおかしくなると、パニックを起こす患者さんも中にはいます。
初めのうちは呼吸音に慣れずに、夜勤中に私も患者さんと一緒にパニックになったことがあります。
今思うとめっちゃ恥ずかしいんですが、思わず自分でナースコールを押してしまって。
コールに出てくれた先輩に「アンタが一緒にパ二クってどーすんの?」とめっちゃ怒られました。

その時は、SpO2は正常だったので、ほっとしたのを覚えています。

ノドが腫れてしまうと、食事や水も摂れなくなるので、そこは看護計画が必要になりますね。
口腔ケアや処方薬でのうがいも大事。

扁桃腺炎の入院患者さんって、年齢はバラバラですが、自立して身の回りのことができる患者さんが多いですよね。
どんな現状で、どうすれば回復していけるのか、しっかりインフォームドコンセントをして、やるべきことをやってもらいました。
その方が治りが早いですから。

たまには他の科の看護をするのもイイですね。
パ二クることもありましたが、新しい知識を付けることができて、面白かったです。

患者さんのイビキ問題

K.Oさん(36女性)
勤務先:耳鼻科病棟

私は、耳鼻科病棟に勤務しています。
耳鼻科では、他の科にも増して深刻な問題がありました。
それは、イビキ問題です。

鼻や喉が悪い患者さんも大勢入院されているので、どうしてもイビキは問題になってします。
一応、入院時に大部屋の方にはご了承をいただいているのですが、不満を持つ方も当然いらっしゃって。
耳栓の代わりに綿球や眠剤を渡しています。

他の部屋のベッドに空きがあるときは、移動してもらうこともあります。
でも、訴えた人だけ特別に移動だと、ガマンしている他の患者さんに申し訳ないんですよね。

たまに「自分のイビキがひどいから」と個室使用の申し出もありますが、それはなんか違うかな、と思っています。
クレームを出す患者さんに個室を勧めすることもあります。「部屋代がかかる!!」とかえってクレームが倍増することもありますが。
だって、大多数の方は、イビキにたいして理解があるんですよ?
同室の人もひどいが自分もひどい。お互い様です、という感じで。
大体大部屋に入るなら、それを覚悟してもらわないとなあ、と思いながらもそこまで厳しいことも言えず。

部屋移動の希望も、他人のイビキが耐えられないと訴えてくる本人が一番イビキの酷い人だったりしますし(溜息)。
そして、言った者勝ちみたいなカンジになるのもどうかと思い、悩んでいたんです。

そして、ある秘策を思いつきました。
それは、回診の時なんかに、ドクターから患者さんへ直接「イビキで眠れないですよね、申し訳ない」って話してもらうことです。
実際にドクターから話してもらったら、効果てきめんでした。ピタリと苦情が収まったんです。
ドクターの力ってすごい。
もしかして、「つらいのをわかってもらいたい」という気持ちだったのが、一番気にしてほしい人から労わってもらえたことで、
気持ちがすっきりしたのかもしれませんね。

そのことがあってから、うちの病棟では、たびたびドクターから患者さんへいたわりの声をかけてもらうことにしています。
おかげさまで、悩みがなくなりました。

突発性難聴の患者さん

H.Yさん(30女性)
勤務先:耳鼻科病棟

私は、内科から耳鼻科病棟にへ異動になった看護師です。
外科に行きたいと希望をしていたのに、師長から「オペ介助の機会があるから耳鼻科どう?」と勧められての異動でした。
私としても、新しいことを勉強したくて外科を希望していただけだったので、耳鼻科でもいっか、という気持ちでした。
しかし、オペの介助は慣れてからと言われました。

最初に担当になったのが突発性難聴の患者さんでした。
突発性難聴になると、急に耳が聞こえなくなるんですね。
片耳だけ聞こえない、両耳とも聞こえない、全く聞こえない、ある程度聞こえるなど、病状は様々なようでした。

看護師が関わるのは、点滴と検査の誘導です。
感音性難聴で内耳の障害で起こるため、安静を守り、薬物治療をします。
薬はプロスタグランティン、ピタミン溶液、ATPなどを加えて点滴。ステロイドも内服します。

ただし糖尿病の患者さんと妊婦さん、授乳中の方に関しては注意が必要です。
糖尿病の場合、ステロイドによって血糖値が上昇した結果、糖尿病が急に増悪することがあるので、同時に内科医の血糖値コントロールを受けることが必須。
妊婦さんや授乳中の場合は、安全な薬とそうでないものがあるので、産婦人科医との連携が必要になってくる。

点滴の話に戻りますね。
これを一週間から10日くらい続けます。
突発性難聴は、原因不明とも、疲れやストレスでなりやすいとも言われていますね。
実は、外来でも治療はできるんですよ。
でも、できるだけ絶対安静にしてもらったほうが聴力が回復しやすいので、入院を勧めますね。
さすがに個室の案内まではしません。そこまでじゃないです。

雑音が耳に入らないことが大切です。
部屋を決めるときは、おしゃべりな患者さんや、にぎやかな場所に近い部屋は避けます。
患者さんの同意を得たうえで、面会も極力避けてもらって、音楽やテレビは禁止にします。

看護でも、できるだけ会話は避けます。
筆談でコミュニケーションを取るときもあります。

特に、最初の2週間にきっちり治療することが大事です。
何日かすると聴力が少しずつ回復してきますので、患者さんは安心して動き回ってしまいます。
本来、2週間は安静にしていてもらわないと困るので、看護師が安静を促すことになります。

私は、聴力が回復する前に、突発性難聴の特徴を説明して、安静を守ってもらうようにします。
本や雑誌、時によりミュート状態でのゲームを勧めることもあります。
結構ゲームが楽しいらしくて、私の受け持ち患者さんは動き回ることがだいぶ減りました。

耳鼻科で新しい仕事も覚えたので、そろそろオペ介助をできないものか、師長に相談してみようと思います。

まとめ

耳鼻咽喉科では、診察介助から入院患者さんまでの幅広い対応が必要なことがわかっていただけたと思います。
オペ看ではないのに、オペ介助ができるので、さまざまな経験を積みたい人には魅力的なところではないでしょうか。

診察介助メインや日帰りまたは短期入院の看護を希望するならクリニックへ、じっくり患者さんのケアをしたい場合は病棟へ転職するのがオススメです。
ただ、耳鼻咽喉科の病棟は少ないので、転職する場合は、転職サイトで情報を探した方が良いかもしれません。