現役看護師が語る緩和ケア病棟の厳しい実態 11人の体験談

緩和ケアに興味あるけど、どんな感じなんだろう?
経験ないと、難しいかな?
看取りばかりで、精神的に大丈夫なのかな?

と気になりますよね。
そこで、実際に緩和ケア病棟で働く看護師の体験談を見てみましょう!

緩和ケア病棟で働く新卒看護師の悩み

理想と現実

G.Kさん(23女性)
勤務先:緩和ケア病棟

私は、総合病院の緩和ケア病棟に配属された、1年目の看護師です。
3年前に祖父を緩和ケア病棟で看取りました。
祖父は献身的に看護してもらうことができ、安らかに逝きました。
そんな看護に憧れ、緩和ケア病棟を希望しました。

しかし、辞めたいと悩んでいます。
理想と現実の違いにショックを受けているからです。
緩和ケア病棟では、患者さんからの暴言がヒドイです。
調子の悪い患者さんは暴言の嵐!
そんな患者さんとは向き合うこともできませんし、献身的な看護もできません。
私はたまに患者さんの前で、顔に出てしまうので、師長から怒られます。
師長から、「緩和ケア病棟の看護師は、女優になりきらないと!」と言われました。
詰所では、患者さんの悪口ばかり。
私の憧れの先輩は、どんなにいやな暴言を吐かれても、顔色ひとつ変えず献身的に看護しています。
でも、裏では患者さんの悪口を言って、笑っています。
やっぱり先輩も女優になりきっているのでしょうか。

祖父の担当だった看護師さんには、本当によくしてもらったし、私もそんな看護師になりたいと思っていました。

でも、現実は理想と違いすぎて、このまま緩和ケア病棟でやっていけるか悩んでいます。

新卒で緩和ケア病棟に配属

N.Nさん(22女性)
勤務先:緩和ケア病棟

私は、緩和ケア病棟で働いて半年になります。
新卒で緩和ケア病棟に配属されました。

緩和ケア病棟で続けられるか、悩んでいます。
精神的にすごく辛いんです。
緩和ケア病棟の患者さんは元気になって退院することがありません。
患者さんの死と向きあうことが多く、辛くて仕方ありません。
私は亡くなった患者さんに感情移入していしまい、切り替えができません。
いつも患者さんのために何かしてあげられることがないか考えていますが、何もできていません。
同期の看護師は私とは正反対で、患者さんが亡くなった後も、てきぱきと仕事をしています。
確かに、他の病棟でも亡くなってしまう患者さんはいます。
でも、緩和ケア病棟は死が前提にある患者さんしかいないので、辛いです。

自信がありません。

G.Bさん(23歳女性)
勤務先:緩和ケア病棟

私は、緩和ケア病棟で働いて、3か月目になる新人ナースです。
実習で終末期のがん患者さんを担当したことがきっかけで、緩和ケア病棟を希望しました。

しかし、精神安定剤を飲みながら、仕事をしています。

緩和ケア病棟で働く自信がなくなってしまったからです。
末期の患者さんとそのご家族の辛い気持ちを思うと、私なんかが寄り添うことができるのかと悩んでいます。

モニターを付けていない患者さんが多く、自分がしっかり観察できているか不安になります。
私がいない間に患者さんが亡くなっていたらと考えるだけで怖いです。

恐怖や自信のなさから、患者さんや先輩看護師ともうまくコミュニケーションが取れません。

確かに、希望して緩和ケア病棟に配属になりました。

でも、勉強したことを活かすことができず、自信もありません。

終末期看護の難しさに悩む看護師

緩和ケア病棟は、経験を積んでから

O.Aさん(28歳女性)
勤務先:緩和ケア病棟

私は、緩和ケア病棟のある小さな病院に転職しました。
3年間内科病棟を経験し、多くのがん患者に携わりました。
そこで、緩和ケアに興味を持ちました。

でも今は、転職してもっといろいろな疾患の看護を勉強したいと思っています。
自分の未熟さに気付いたからです。
緩和ケア病棟では、がん患者だけでなく、いろいろな科の終末期を迎える患者がいます。
実務経験の長い看護師が多く、私のような実務経験3年の看護師はほとんどいません。
「患者さんのために何ができるのか?」といつも悩んでいます。
自分が患者さんのために何もできないまま、死を見届けることになってしまうこともあり、辛いです。
緩和ケア病棟は、最期まで患者さんと向き合える素晴らしい病棟です。

でも、私のアセスメント能力や知識・経験では、務まらないと痛感しています。
転職して経験を積んでから、緩和ケア病棟に戻りたいと考えています。

認定看護師を目指しています。

H.Tさん(32歳女性)
当時の勤務先:緩和ケア病棟

私は、緩和ケア病棟で5年間働いています。
外科病棟の一部が緩和ケア病棟になったので、その時に外科から緩和ケアに異動になりました。
特に、緩和ケア病棟を希望したわけではありませんが、人事異動なので仕方ないという感じでした。
緩和ケア病棟に配属になって半年間は、外科病棟に戻りたいと悩んでいました。

少しでも患者さんがラクになれるよう、自分に何ができるかと勉強の毎日でした。
でも勉強したことを、すぐにいかすことができませんでした。

薬の副作用などもなかなか覚えらませんでしたし。
オピオイドの副作用の悪心や嘔吐に対して抗ドパミンを使用すると、また別の副作用が起こることもありました。
薬の副作用に苦しむ患者さんを看るのはとても辛かったです。

病棟内の勉強会はもちろん、看護協会や県が主催する研修などにも積極的に参加しました。
でも、勉強すればするほど、患者さんの役に立てないことで無力感でいっぱいになりました。

そんな時に、師長から「患者さんとより添うことも立派な看護師の役目なんだよ。」と言われました。
それからは、少し肩の力が抜けたというか。
今でも患者さんの為にという想いは変わりませんが、緩和ケア病棟に配属になったばかりの頃は、想いが強すぎたかのかなと思っています。

そして今は、緩和ケアの認定看護師を目指して勉強を続けています。

緩和ケア病棟を辞めたいと悩む看護師

終末期の患者さんの対応は難しい

S.Tさん(28歳女性)
勤務先:ホスピス

私は、ホスピスで働いて半年になります。
もともと緩和ケアに興味があり、内科病棟で5年勤務後、転職しました。
しかし、転職して半年で辞めたいと悩んでいます。
患者さんへ対応が難しく毎日が辛いからです。
「死ぬのが怖いよ」という患者さんに対して「大丈夫だよ」としか答えられませんでした。
何と言ったら、患者さんを安心させられるのか。
考えても、答えはでません。
末期の患者さんからの暴言・暴力もあります。
師長に相談しても「患者は痛みに耐えながら死の恐怖と戦っているんだから、仕方ない。」
と言われました。
患者さんの暴言や暴力の原因は「死の恐怖」だと、思うんです。
その恐怖を少しでも和らげれば、暴言・暴力も減らすことができるんじゃないかと考えても
結局、何もできないんです。

亡くなった患者さんのご家族から感謝されると、私でもお役に立てたんだと感じることはできます。
でも毎日が辛く、辞めたくて仕方ありません。

緩和だからって、許せません

M.Rさん(30歳女性)
勤務先:緩和ケア病棟

私は、緩和ケア病棟で3年勤務しています。
内科病棟を5年経験した後、異動になりました。
緩和ケア病棟は、スタッフの人間関係がよくてとても働きやすい病棟です。

でも緩和ケア病棟で続けていくか、悩んでいます。

患者さんの家族でうつ病の方がいます。
私はその家族から目の敵にされていて、私だけに攻撃的な感じでクレームを言われます。
説明しても、話を聞いてくれません。
「この腹黒い看護師め!」とプラスチックのコップを投げつけらたこともあります。

緩和だからって、患者さん家族のわがままや暴言を許すことができません。
他の看護師のように、熱い想いもありません。
正直、めんどうな患者さんは居なくなってくれないかなぁと思ったり。
私って、サイテーです。

確かに、スタッフはうつ病の家族と会わないように、配慮してくれたり、相談にも乗ってくれます。
でも、こんな気持ちのまま、緩和ケア病棟で続けていけるか悩んでいます。

緩和ケア病棟でやりがいをみつけた看護師

緩和ケア病棟の魅力

M.Bさん(37歳女性)
勤務先:緩和ケア病棟

私は、緩和ケア病棟に勤務して15年になります。
新卒から緩和ケア病棟ひとすじです。
しかし、緩和ケア病棟はいつも人手不足で困っています。

離職率が高いです。
特に、新人さんは長続きしません。
緩和ケアならではの看護がしたいと思った方でも、辞めていく方は多いです。
病気を治療する場所ではないので、多く死を見届けなければなりません。
やりがいを感じられる前の、辛い現実に心が折れてしまう看護師が多いのが原因だと思います。

そこで、私の緩和ケア病棟でのやりがいについて書いてみます。
患者さんは、残された時間、一日一日を大切に過ごしています。
その貴重な時間を、より豊かにできるお手伝いができることにやりがいを感じています。

梅酒の好きな患者さんのお誕生日には、梅酒パーティー。
しかも、おつまみは看護師が手作りして、持ち寄ったり。
当日の朝、少し体調の悪かった患者さんも、誕生日会ではとても楽しそうに過ごされていました。

楽しいひと時を過ごした患者さんとのお別れは、毎回とても悲しいです。
でも、ご家族から「最後のお誕生日が忘れられない日になったよ。ありがとう。」と感謝され充実感でいっっぱいになります。

他の看護師にも、緩和ケア病棟の魅力が伝わることを願っています。

緩和ケア病棟に配属されて

E.Uさん(25歳男性)
勤務先:緩和ケア病棟

私は、新卒で緩和ケア病棟に配属された3年目の男性看護師だ。

配属された日、師長から「自分が患者さんの為にできることは何もない。」と言われた。
本当にその通りで、何もしてあげられないまま、患者さんは亡くなっていく。
自分の浅はかな言葉で、患者さんを傷付けたこともあった。
トイレや入浴介助では、女性患者から拒否されることに、落ち込んだ。
同期から「患者が元気になって退院していくことがやりがい」と聞き、さらに落ち込む。

患者さんが、誰にも看取られず、亡くなったことがあった。
自分とご家族がいない間のことだった。
自分の観察・知識不足を悔やみ、やりきれない気持ちでいっぱいだった。

出来の悪い自分が看取りにかかわっていいのだろうかと悩んだ日もあった。

そんな中で
「孫と話してるみたいで、楽しいわ。またお願いね。」
「大変なことさせて、すまないね~。」
「久しぶりのお風呂は、本当に気持ちよかったよ。ありがとう。」
と患者さんから声をかけていただき、少しづつやりがいを感じていった。

3年目の今では、看取りという責任の大きい仕事を光栄に感じている。

緩和ケア病棟にアロマ療法を

D.Bさん(32歳女性)
当時の勤務先:緩和ケア病棟

私は、アロマテラピストの資格を持つ看護師です。
消化器内科から緩和ケア病棟へ転職しました。

以前働いてた消化器内科では、がんで亡くなる患者さんが多く、痛みの緩和にアロマテラピーを取り入れたいと考えていました。
そこで、アロマ療法や音楽療法を取り入れている緩和ケア病棟へ転職を決めました。
私の働く緩和ケア病棟では、週に1度、臨床アロマテラピストに来ていただいて、患者さんが施術を受けていました。
私が入職したことをきっかけに、日常的にアロマを取り入れることになりました。
痛みで眠れない患者さんに、アロママッサージをすると、安心して眠ってもらうことができます。

30代の息子さんをがんで亡くされたお母さまからは
「息子がアロマを受けた後は、わたしと穏やかな時間が過ごせたました。
痛みで辛い時間が多かったから。アロマのおかげですね」
といっていただけました。

アロマはリラックス効果だけでなく、患者さんの痛みやストレスの緩和、免疫を高める効果があります。
そして、ご家族のケアにもつながるんだと感じました。

緩和ケア病棟のやりがい

D.Aさん(35歳女性)
勤務先:緩和ケア病棟

私は緩和ケア病棟で働く6年目の看護師です。

私の働いている緩和ケア病棟は、15床すべてが個室になっています。
個室ですが、ほとんどの患者は扉を開けたままにしているので、病棟全体としてはとても開放的な雰囲気です。
日中の看護師体制は4人なので、患者さんひとりひとりと向き合い、ゆとりをもって看護をすることができます。

ゆとりをもった看護をしたいと思い、消化器内科から異動しました。
私は、患者さんが自分らしくより豊かな時間を過ごせるよう心がけています。
私だけでなく、緩和ケア病棟で働く看護師は、みんな同じ気持ちだと思います。

また、看護師だけでなく、たくさんのボランティアさんに協力してもらい、緩和ケア病棟は成り立っています。
月に一度ボランティアさんと一緒にお楽しみ会を開催しています。
お楽しみ会では、患者さんが残された時間に楽しみが見つけられるよう、お茶会や音楽会、ちぎり絵などを行っています。
痛みと戦っている患者さんが、少しでも笑顔になってくれることが、私のやりがいにもなっています。

患者さんひとりひとりと向き合った分、お別れするのはとても辛いです。
それでも患者さんのご家族と、亡くなった患者さんを偲ぶことで、乗り切ることができます。

緩和ケア病棟に勤めてから、死はつらいことではない、どんな最期を過ごせるかが大切なんじゃないか、と思えるようになりました。

まとめ

いかがでしたか?

理想と現実の違いに落ち込む看護師
自分の知識と経験不足に悩む看護師
患者さんのために何もできないと悩む看護師
このように様々な理由で悩んでいる看護師がいることがわかりました。
反対に、やりがいを見つけた看護師もいます。

緩和ケア病棟は、死と直面することが多く、辛い職場です。
少しでもやりがいや魅力を感じることができれば、続けていけるはずです。
「やりがいを見つけること」
それが、緩和ケア病棟で働き続ける秘訣です。