5人の看護師の体験談から学ぶ 脳神経外科の仕事内容と特徴

脳神経外科の看護師って、どんな仕事をしているの?

具体的にはよくわからないな~、と思いませんか?
特に、ほかの科から見たときわかりにくいと思います。

そこで、実際に脳神経外科で働いていた看護師5人の体験談を集めました。、
脳神経外科で行われている看護師の仕事とその特徴を紐解いてみましょう!

5つの体験談を紐解く

他科と比較して

K.Yさん(女性)

私は内科から脳神経外科に異動して2年目の看護師です。
異動をしてから、脳神経外科と内科での業務や必要な知識の違いに驚かされました。

特に、私が大変だと感じた違いについてお話をさせていただきます。

まず、脳神経外科の点滴は他科の点滴と比べて時間管理がかなり細かくなります。
脳神経や血管系にダイレクトに効果がある薬剤を使用する点滴がほどんどです。
そのため、投与時間や投与量が少しでも違うとたいへんです。
しかもそれを1日かけて続けていくため、1つがズレると後の点滴の投与時間にも影響が出てしまいます。

そして、他の科ではバイタル測定と言えば血圧・脈拍・検温程度が通常の業務です。
脳神経外科ではそれに加え、MMTと意識レベル・対光反射・瞳孔の大きさは必ず記録に残します。
やることが多くなり、時間がかかってしまいます。
他にも、CTがある程度見られること・アンギオの知識や造影剤の副作用が頭に入っていることが必要です。
特にCTが見られれば、どの部位が麻痺するかがある程度わかりますので、今後の方針を考えることができるようになります。
知識をつけるために、看護師といえど勉強会や研修会への出席が必須です。

他科から異動すると、違いに戸惑うことも多いです。
でも、今では患者さんの異変に早く気づくことができるようになりました。
脳神経外科から他科に異動があっても、脳神経外科で得た知識やスキルは役に立つと思えます。

=特徴=
・点滴が細かい
・バイタル測定でやることが多い
・脳神経外科ならではの知識が必要

噂の通りキツイ科です

D.Iさん(男性)
当時の勤務先:内科

私は、内科から脳外科へ異動して1年目の看護師です。

脳外科に異動して、聞いていた通り難しいキツイ科だと実感しています。

まず、OP後の管理です。
筋力やレベル低下の有無、12神経症状の観察、スパズムの観察など気を付けるところが多くなります。
また、高齢者が多いため脳梗塞やOP後に不穏になり、ドレーン類の自己抜去などのリスク回避も必要です。
脳外科は、チームナーシングよりもユニットでの看護がメインになると感じています。
急変が多いため、管理ができないと患者さんの命に関わります。プレッシャーが大きいですね。

次に、体力的な面についてです。
脳外科は一般的に麻痺によって他の科の患者さんよりも患者さん一人あたりの看護度が高いと感じました。
脳外疾患の患者さんはADLの低下が著しいと思います。
移乗や体位変換、食事や排せつの介助などが多く、自分が看護師なのか介護士なのかわからなくなることもあります。

最後に、勉強が必要な点です。
どこで働くにも勉強はしなくてはなりませんが、脳外科は他の科と比べて強制の勉強会がとても多いです。
脳外科で働くには、解剖生理をマスターしたり、様々なモニターが見られるようになったりと学ばなければならないことが多いです。
それだけではなく、脳外科では医療技術が他の科に比べてとても進歩していて、最先端の医療が行われています。
その分、他の科よりもさらに多くの勉強が必要になるというわけです。
夜勤明けの勉強会などは体力的にもとても辛いです。

ただ、一つずつ自分が一人で出来ることが増えていくので成長を感じることはできます。
脳外科で一人前になれたらどこでも通用する看護師になれるので、このまま頑張って働きたいと思っています。

=特徴=
・OP後の管理がたいへん
・体力的にキツイ
・勉強が必須

やりがいがある仕事

U.Nさん(男性)

私は、新卒で脳神経外科に配属されて2年目の看護師です。
配属が決まった時には嫌で仕方がなかった脳神経外科ですが、今では配属されてよかったと思っています。
その理由をご説明します。

まず、脳神経外科では、自分の観察力や看護力が試されます。
クモ膜下出血や急性硬膜外血腫などの病態は処置が1分1秒違うだけで患者さんの予後に大きな影響を与えます。
迅速に正しい判断ができたと思える時は最高の気分ですね。

そして、全身麻酔後の看護に加え、麻痺の出現やJCS、眼球運動異常などの神経系に関する観察眼を養うこともできます。
脳室ドレーンをはじめ、頭に留置するドレーン類はベッドアップ制限や怒責禁など、かなり厳重な管理が必要です。
意識レベルが清明でない場合には、自己抜去の可能性が高まります。実際に抜去されたら命に関わりますので、気をつけておかなくてはなりません。

さらには、リハビリ期にまで関わることができます。
脳神経外科の特徴としては片麻痺や嚥下障害などの患者さんが多いため、嚥下訓練や間接介助など幅広いリハビリに関わることができます。
自分の考えた看護で患者さんの意識レベルが上がっていったり、できることが増えていくのを見た時はやはり嬉しいですね。

患者さんが思うように動けず、八つ当たりをうけることもありますし、もちろん言われている通りとても忙しくヘビーな職場です。
でも、脳神経外科はそれを上回るやりがいを感じることのできる診療科だと思います。

=特徴=
・観察力や看護力が試される
・観察眼が養われる
・リハビリに関わる

インプットとアウトプットを繰り返す

M.Aさん(女性)

脳神経外科で5年ほど看護師をしています。
脳神経外科では、ならではの知識が多く必要でインプットとアウトプットを繰り返すことが大切だと思っています。

脳神経外科では意識レベルを観察するのに、日本独自のJCSと世界基準のGCSを使います。
四肢の運動状態や麻痺を看る場合にはレバーテストやMMTを駆使していきます。

まず、梗塞の場合です。
梗塞は、他の診療科では単に脳梗塞としての治療を行いますが、脳神経外科ではどの部分による梗塞なのかを見ます。
看護師がフィンガーノーズテストで平衡感覚を確かめることはよくあります。

次に脳出血の場合です。
脳出血の場合は、皮殻や視床、くも膜下出血などによって症状が違いますので、理解をしておく必要があります。
MCAやIC-PCなどの、どこから出血しているかを見ていかなくてはなりません。

そして、脳神経外科にとって一番怖いのは、脳浮腫から脳ヘルニアを起こすことです。
ベッドアップの角度やドレーンの高さ・圧にはシビアに対応します。
脳ヘルニアが起こってしまった場合には治療は一刻を争うため、瞳孔不同の有無や呼吸状態の変化、バイタルサインの変化に注意して観察をします。

このように、脳神経外科では、脳神経外科ならではの知識が必要になります。
でも、脳神経外科で学ぶ内容は他の診療科に異動した時でも生かすことのできるスキルだと思います。

=特徴=
・検査が多い
・脳神経外科ならではの知識が必要
・観察眼が必要

患者さんそれぞれ

E.Hさん(女性)

私は新卒から3年前まで脳神経外科で働いていた看護師です。
脳神経外科で働いた経験を生かしてリハビリ科で働いています。

脳神経外科では、超急性期からリハビリ期までの幅広い患者さんを看ます。
寝たきりだった患者さんが退院される時には、とても嬉しい気持ちになります。

患者さんは、同じ疾患でも症状や重症度や回復の度合いは人によって異なります。
そのため、私たち看護師は患者さん一人ひとりに合った看護計画を立てなくてはなりません。
マニュアル通りの看護ではいけないのです。その分、時間も労力もかかります。
ただ、自分が考えた看護によって患者さんの意識レベルが上がったり出来ることが増えたりすることで、それまでにかけた時間も労力も報われます。
患者さんの反応や変化に、やりがいを感じます。

患者さんと一緒に目標に向かって頑張ることのできるリハビリ期が、私にとって楽しい業務でした。
しかし、脳神経外科では突然、夜勤や残業になることがあり体力的にキツかったので、転職を決めました。
ただ、脳神経外科で働けたことは良かったと思っていますし、脳神経外科のおかげでリハビリに興味を持てました。
現在は、希望のリハビリ科で働けて満足しています。

=特徴=
・リハビリに関わる
・患者さんに合わせた看護計画を立てる

とにかく知識をつけること

A.Yさん(女性)

私は現在、脳外科で働いています。
脳外科は勉強することが多く、他の診療科に比べて勉強会が頻繁に開催されます。
昔から勉強が好きだったこともあって、脳外科に配属されて良かったと思っています。

脳外科では、脳という最も繊細な部位の看護をします。
クモ膜下出血や急性硬膜外血腫などは病態が急変することも多いため、焦らず対応しなくてはなりません。
再発の兆候をしっかりと観察することも重要です。再出血してしまったときには、1分1秒の遅れで患者さんの容態が悪化してしまいます。
そのため、脳外科の看護師にはプレッシャーの中でも臨機応変に対応できることが求められます。
急変時の対応や疾患の症状などは頭に入っていることが前提となります。

オペ患者さんは、脳室ドレーン・脳槽ドレーン・スパイナルドレーンが入っていることが多いため、各ドレーンの観察は理解していなくてはなりません。
もちろん知識だけではなく、ドレーン類の取り扱いには細心の注意が必要です。
オーバードレナージが起こると、出血を助長したり痛みが生じてしまいます。
さらに、刺入部から排液が漏れていた場合には、髄液感染の原因となるので、特に気をつけなくてはなりません。

また、脳神経外科ではICPモニター、動脈圧モニター、心電図など、多くのモニターを管理し読める知識が必要です。
新しい医療機器や投薬も多いため、専門知識を常に学び続けることが重要になります。

とにかく勉強し続けて知識を増やし、新しい技術も身に着ける、忙しくてたいへんな診療科だと思います。
でも、それが私にとっての大きなやりがいになっています。

=特徴=
・プレッシャーの中で臨機応変に対応できる力が必要
・勉強が必須
・脳神経外科ならではの知識が必要

脳神経外科の仕事の特徴まとめ

脳神経外科の仕事内容、いかがでしたか?
特徴がたくさんありましたね。

・勉強が必須
・脳神経外科ならではの知識が必要
・検査が多い
・点滴が細かい
・バイタル測定でやることが多い
・OP後の管理がたいへん
・リハビリに関わる
・患者さんに合わせた看護計画を立てる
・観察力や看護力が試される
・観察眼が養われる
・体力的にキツイ
・プレッシャーの中で臨機応変に対応できる力が必要

脳神経外科って、やることは多いしプレッシャーも大きい。
それだけじゃなくて、ひたすら勉強も必要というなんとも厳しい診療科ですね!

それでも、皆さん「脳神経外科で働いて良かった!」というご意見でした。
脳神経外科で働くことで幅広い患者さんを看ることができ、他の科でも通用する知識や経験が得られます。

看護師としてのスキルアップを考えているあなた!
脳神経外科という選択肢を選んでみては?