辞めたくなる理由一位は「患者さんとの関係」 透析科に勤める11人の看護師の体験談

透析に行きたいけど、患者さんってクセのある人が多いって聞くし、大変そう…。

患者さんへ先輩看護師はどんなふうに対応しているの?とギモンに思うことがあると思います。

透析看護師も、イロイロ悩みながら働いています。

常連の患者さんに振り回され、「こんなハズじゃなかった…」と、異動や転職を考えている先輩たちがいます。
患者さんとの関係に悩むけれど、なんとかがんばろうと奮闘する先輩たちがいます。
患者さんの信頼を勝ち取り、仲良くなれた先輩たちもいます。

そんな先輩たちの実体験を紹介していこうと思います。

異動や転職を考えている先輩たち。

食べ続ける患者

G.Gさん(32女性)
勤務先:透析室

私は、12年の病棟経験のあと、透析室へ異動してきました。
透析につながる疾患がを学びたかったからです。

でも、病棟へ戻してもらいたいと思っています。

暴飲暴食の患者さんばかりで、透析中はずっと食べっぱなしなんです。

ある患者さんは穿刺中にはアメを舐め、、ベッドに入ってからはグミキャンディーを5袋。

医師の前でだけ、透析のことを考えている患者のフリして、「リンは…」なんて質問をするんです。
医師の姿が見えなくなると、食事を再開。

他にも、「病院に来る前に天津飯食べてきた」とか、生活指導の意味がない患者さんばかりで、仕事していてむなしくなります。

先輩にも師長にも相談しましたが、「そんなもんよ」で終わりました。

もう、ガマンの限界です。

糖尿病や腎不全といった、透析へつながる疾患を学ぶことはできます。
でも、生活指導をしても意味がない患者さんばかりなので、病棟へ戻してもらいたいと思っています。

年配が嫌いになる職場

H.Kさん(32女性)
勤務先:透析室

私は、総合病院の整形外科から透析室に異動しました。
年配の方と仲良くなりたかったです。

でも、年配の方を嫌いになりました。

透析室では、患者さんのイライラといつも向き合う必要があるからです。

糖尿病でコントロールができなくなり、透析しないと生きられなくなった患者さんのグチを延々と聞き続けることがあります。
透析慣れしている患者さんは、「仕事が遅い」とイヤミを言ってくるので、なだめないとダメです。
週に3日会わなければいけないので、相性の悪い患者さんとも、何十年も付き合っていく必要があります。

透析室で長く勤めることができるなら、年配の方と仲良くなれる環境ではあります。

ですが、患者さんのイライラと常に向き合わなければならなくて嫌でした。
そして、患者さんは高齢の方が多いので、年配の方が嫌いになりました。

1年勤めたので、そろそろ整形外科へ戻してもらおうかと思っています。

患者さんの悩み

B.Gさん(32女性)
勤務先:透析室

私は、慢性期病棟から透析室に異動しました。
スキルアップしたかったからです。

でも、早々に緩和ケアへ行きたくなっています。

患者さんに関する悩みが絶えないからです。

ワガママな患者さんが多いうえに、一番最初に穿刺しないと怒り出す人もいますので、難しいところがあります。

特に、認知症の患者さんには困ります。
それは、自己抜針してしまうことがあるからです。
そういう患者さんからは目を離したくないのはやまやまですが、看護師が張り付いているわけにもいかないので、悩みのタネです。

環境としては、スキルアップできると思います。実際、今後はどこへ引っ越ししても仕事の面では怖くなくなりました。

ですが、患者さんに関する悩みは尽きないし、年配の方を看るなら、まだ緩和ケアへ行ったほうが心穏やかに仕事ができそうです。

近々、緩和ケアへ異動をさせてもらう予定でいます。

生活指導で気が狂いそう。

M.Uさん(32女性)
勤務先:透析室

私は、オペ室から透析室へ転職してきました。
患者さんと仲良くなれると聞いたからです。

でも、気が狂いそうです。

患者さんが、治療に協力してくれないのです。

食事制限のある患者さんに毎回「ちょっとは大目に見てよ!」と言われて、生活指導するにも嫌気がさしてきました。

時には、患者さんに「お茶買ってきて」「家に電話してきて」と、お手伝いさん扱いされることもあります。
しかも、「ここは家じゃないですよ」とスルーすると、激怒されます。

時々師長に相談するのですが「しょうがないのよ、患者さんもストレスが溜まっているから」と助けてくれることもありませんでした。

さすがに、もう限界です。

患者さんと仲良くなることはできました。
でも、患者さんが治療に協力してくれません。
どうしたら協力を仰げるかを考えても、アイデアも浮かばないので、気が狂いそうです。

このまま、患者さんの生活指導がうまくいかないようなら、オペ室へ戻してもらおうと思っています。

バトルを繰り広げる透析クリニック

M.Uさん(30女性)
勤務先:透析クリニック

私は、看護師8年目で、病棟から透析クリニックに転職しました。
というのも、患者さんと長く付き合うところだと聞いていたので、患者さんとお話したかったからです。

しかし、心身ともに疲れ果てました。

透析患者さんの指導に骨が折れるからです。

私は頭に血が上りやすいので、週3で受け持ち患者さんとバトルしてました。

顔を見るたびに「食べてないですよね??」と患者さんを睨みつけながら確認していました。
患者さんは「お前のために食べてきてやったぞ!!」と私をにらみ返すんです。

サイアクな時は、患者さんが2日で10キロ体重を増やしてくることもありました。

そんなある日、患者さんが心停止しそうなデータになってるのを発見しました。
私は、バトルなんかやってても患者さんは変わらないと思い、患者さんに「このままだといつ心臓が止まってもおかしくないです。
お願いですから、食事制限は守ってください」と涙ながらに訴えました。

そうしたら、話を聞いてくれるようになり、今では食事制限を守ってくれています。

でも、バトルをしなければならない患者さんが多いクリニックなので、実際に命の危険な数値になるまでは、患者さんも自覚が足りないので、食事制限を守ってくれません。
正直、そろそろ限界です。

透析クリニックは、患者さんとお話できる職場ではあります。

ですが、患者さんの指導に骨が折れるので、心身ともに疲れ果てました。

今は、慢性期への転職を考えています。

悩みながらも奮闘する先輩たち。

冷たい看護?

N.Gさん(36女性)
勤務先:透析室

私は、15年の病棟経験を経て、透析室へ異動してきました。
新しい仕事にチャレンジしたかったからです。

透析室へ勤務しだしてから、自分が冷たい人間になった気がします。

患者さんの暴言が多いので、寄り添った対応をしなくなりました。

通院年数が長いほど、透析室が患者さんにとって「勝手知ったる他人の家」のようになってしまい、「つらいのをわかってほしい」気持ちから、医療者への暴言につながってしまうことがあるように感じます。

患者さんのつらい心に寄り添いたいのは山々ですが、言われることが悩みというより暴言なので、うまく対応できず、冷たい対応をすることが多くなりました。

新しい仕事は楽しく覚えることができています。
でも、患者さんの暴言を聞いてもあまり感情移入ができず、寄り添った対応をしなくなりました。

このままでは、冷たい人間になってしまうのではないかと不安で仕方ありません。
明日、先輩に患者さんへの上手な寄り添い方を聞いてみるつもりです。

ブラック患者

R.Dさん(33女性)
勤務先:透析室

私は、12年の病棟経験のあと、透析室へ異動してきました。
新しい技術にチャレンジしたかったからです。

でも、透析室が嫌いになりそうです。

横柄な患者さんへの対応が必須なのです。

お金を払っているからと、穿刺する看護師を指名する患者さんがいます。
そして、技師が穿刺しようとすると、「女のコに穿刺変わってよ」とクレームが出ることもあります。
きわめつけには、生活指導を守らずに、好きなものを好きなだけ食べてきて「数値良くならないよね」とイヤミを言われることもあります。
私は温厚だといわれるのですが、時々キレそうになります。

私の職場では、技師も師長も先輩もしっかりしているので、患者さんのワガママ放題が通ることはありません。
それが唯一の救いです。

透析室に来てから、新しい技術は徐々に覚えることができています。
でも、横柄な患者さんのせいで、透析室が嫌いになりそうです。

透析のことはもっと勉強したいです。
患者さんの対応は、できるだけキレそうな言動もスルーするように努力していこうと思っています。

患者さんの信頼を勝ち取った先輩たち。

患者さんの体調管理

O.Sさん(32女性)
勤務先:透析室

私はこの春、12年勤めた病棟から透析室へ異動になりました。
人手が足りなかったからです。
透析室は、スキルアップはできるけど、「ワガママな患者さんばかりいる」という先入観があり、あまり乗り気ではありませんでした。

でも、透析室に異動して正解でした。

患者さんの体調を管理することができるようになったからです。
自分のアセスメントでドライウェイトの設定ができるようになりました。
リンのコントロールや摂水・食事制限など、患者さんの生活指導ができるようになりました。

摂水・食事制限は苦しいと思うので、ワガママな態度を取る患者さんも多いです。
でも、患者さんと打ち解けたら、「アンタのいうことは聞くわ。」と、素直に聞いてくれるようになりました。
おかげで、スキルアップもできて一石二鳥です。

患者さんとのふれあい

I.Gさん(26女性)
勤務先:透析室

私は、病棟を5年経験したあと、透析室に勤務しています。
辞令で仕方なかったからです。
はじめは、透析室の患者さんは怖い人ばかりだと聞いていたので、行きたくなかったです。

でも、病棟より楽しく働くことができています。

患者さんと仲良くなれたのです。

信頼関係を築いてから穿刺をさせてもらえたので、「私で練習していいよ」と言ってくれる患者さんが多かったです。
慣れるとルーティンワークなので、患者さんとのコミュニケーションも楽むこともできます。
長く通っている患者さんが多いので、一人の患者さんとじっくりかかわる時間が持てます。

「新入りにやってもらいたくない」と怖い患者さんににらまれることもあります。
でも、笑顔で精一杯の対応をしていたら、「お前でもいいや」と言ってくださる方が増え、患者さんと仲良くなることできました。
今では、病棟にいた時より楽しんで働いています。

コミュニケーションを学べる。

T.Gさん(36女性)
勤務先:透析クリニック

私は、子どもが生まれた後、透析クリニックで復職しました。
近くに透析クリニックしかなかったことと、出産前は心外で働いていたため、仕方なく入職しました。
患者さんが自己中だと聞くので、気合を入れて臨みました。

でも、透析に一生関わっていきたいと思えるようになりました。

意外なことに、透析クリニックで患者さんと仲良くなれたからです。

通ってくる人は透析が命綱なので、どうしても顔ぶれが決まってきます。そうすると、コミュニケーションをするようになります。
最初は「誰が新人なんかに刺させてやるか」と言っていた患者さんに積極的に話しかけることで、心を開いてくれた。
次第にいろいろなことを話してくれるようになりました。その中で、食事の相談も受けるようになり、食事の制限を守ってくれるようになりました。
そして、最終的には穿刺させてもらい、「アンタに刺してもらいたい」と言われるようになりました。

中には、最初から「はじめは誰でも下手でしょ」と、練習台になってくださった患者さんもいます。

どちらかというと、透析クリニックに通っている患者さんは、自己中な人が多いです。
でも、ちょっとしたコミュニケーションを大切にして、患者さんにも誠意をもって向き合えば、意外に心を開いてもらえるのではないでしょうか。

私は、透析に一生関わっていきたいと思える患者さんとの関係を築くことができました。

やみつきになる場所

N.Sさん(36女性)
勤務先:透析室

私は、転職で透析室に配属になりました。
希望したわけではありませんでしたが、経験を積めるのには変わりないので、承諾しました。

でも、入職したてのころは、転職を後悔していました。

新人だと患者さんにスキルを疑われるのです。

長年透析をしている患者さんに、生半可な看護師より知識を持っています。
いろいろ質問をされましたが、答えることができませんでした。

そのため、患者さんに「ちゃんとやってくれる看護師」と認めてもらえず、穿刺や生活指導を拒否されました。

悔しくて、「どうすれば患者さんに対応できるようになりますか?」と先輩に聞いたら、「聞かれたことは必ず答えることと、慎重かつ確実に1つ1つの仕事を進めることができれば、患者さんに対応できるようになる」とアドバイスをもらいました。

それからは、患者さんの質問には多少時間がかかっても、必ず答えるようにしました。
そして、仕事は確実にこなし、穿刺の介助をしながもコツを聞き、必ずメモするようにしました。

先輩に言われたことを実行していると、「頑張ってるね、やってみる?」と先輩に言われました。

ついに、患者さんに穿刺できる機会が巡ってきました。

日ごろの成果が実り、患者さんの質問にはきちんと答えることができました。
「しっかり答えられるじゃない、安心だわ」と言われ、穿刺は見事成功しました。

透析室は、経験を積める場所です。
でも、慣れなうちは、転職を後悔するかもしれません。それほど、新しいスタッフに患者さんは厳しいです。
透析は、患者さんの命をつないでいるものですから、自分の命を信頼できない人に任せられないのでしょう。

患者さんに信頼されることや透析技術を深めることの面白さが実感できるようになれば、透析看護にやみつきになるかもしれません。

まとめ

いかがでしたか?
先輩によって、透析の患者さんと仲良くなれる人、どうしても相性が合わなくて透析を去るしかなくなる人…
本当に様々ですよね。

透析患者さんと良い関係を築くのにはある程度患者さんと仲良くなれるように努力することが必要です。
でも、患者さんのいうことを一方的に聞いていては身が持たないので、時には患者さんをなだめることも必要です。

なまけず、あせらず、患者さんの犠牲にもならないような覚悟が持てるのでしたら、ぜひ透析へ来てください。
あなたの転職をお待ちしています。