介護施設で働く看護師の苦労って?4人のナースに話を聞いてみた

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あなたの周りに介護施設で働く看護師さんはいますか?

介護の現場には欠かすことが出来ない看護師さん。
でも実際に勤務している看護師は、実は多くはありません。
そのため、介護施設での実情を知る機会がないんですよね。

そこで今回は介護施設で働く看護師さん4人にインタビューしました。
転職の候補・参考にして頂けると幸いです!

身体的には楽な場合が多い

R.Kさん(女性30代)
内科5年、介護施設1年、診療所(内科)5年

大学病院で約5年の内科勤務を経て、介護付き老人ホームで1年勤務。
現在は診療所で勤務中。

勤務していた介護施設

介護付き有料老人ホームです。
入居者50名ほどに対し、看護師5名(正社員3名、パート2名)、介護士20名弱。
月1回外部医療機関の医師の訪問あり。

スタッフとの関わり

看護師間、また看護師と介護士間での申し送りが随時行われており、お互いに協力しようという雰囲気がありました。
痰の吸引や消毒などの医療行為以外の入浴やトイレ介助、食事介助等は、介護士さんが全面的に実施していました。
なので、大学病院で勤務していたときに比べて、体力的にはかなり楽でした。

利用者さんについて

高級老人ホームだったこともあり、利用者さんやご家族に対しての態度や言葉づかい等は、かなり気を付けていました。
また施設内の整理整頓や、スタッフのメイク・髪型も、厳しくチェックされている感じがありました。
それがかえってよい刺激になっていました。

仕事がやりにくいことは?

日勤の看護師は、基本3名体制でしたが、夜勤は1人。
介護士の方達がかなり協力的だったので、仕事がまわらないということはありませんでした。
しかし医師のいない環境で、50名もの利用者さんを看ているというプレッシャーはかなりありました。

医療度介護度が高くても、1人でも多く入居者さんを増やしたいという施設側と、実際に介護する側との考えの隔たりが常にあります。
巻き込まれるスタッフはストレス大です。

また一般の医療機関のように、医療物品が整っていません。
看護職間でも知識や技術の差が大きく、そこを埋めるあるいは近づける必要もあります。

私の場合はたまたまスタッフに恵まれ、人間関係のストレスはありませんでした。
大抵は少ない人数で切り盛りしなくてはならないため、問題のあるスタッフがいたりするとかなり大変だと思います。

アドバイス

一般の医療機関のように医師が常にいる状況と比べると、医療度の低い方が多いとはいえ、看護師の精神的な負担はかなりあります。
特に夜勤を人でこなすのは、恐怖さえ感じることがあり、常に緊張状態で疲れました。

また介護士さんや、施設側のスタッフの方ともうまく渡り歩く必要があります。
利用者さんやそのご家族にもいろんな方がいますし、医療機関とちがって24時間365日そこにいらっしゃるので、一度人間関係をこじらせてしまうと大変です。

ただその2点さえうまく対応できる方なら、問題なく勤務できるでしょう。
介護士さんがいらっしゃるおかげで医療行為に専念でき、身体的には楽ですし、利用者さんに寄り添う時間もたくさんつくれます。
そういう看護がしたいという方にはおすすめのお仕事です。

介護士さんとのコミュニケーションが大事

U.Iさん(女性30代)
内科10年

総合病院で4年消化器内科勤務の後、クリニックにて内科外来業務6年を経験し。
結婚し、夫の転勤のため退職。
その後出産を経て、育児に余裕が出来たので、介護施設にて社会復帰しました。

勤務する介護施設

20床程度の重症患者も受け入れるナーシングホームです。
看護師2~8名。
介護士25名。
常駐の医師はいません。

スタッフとの関わり

介護士さんが身体ケアをしてくれるので、褥創や皮膚のケアなどのスキントラブルのある方は、その都度呼んでもらい処置を行います。
患者情報は申し送りやノートを活用し、常に共有しています。

医師は常駐していませんが、決められた日に往診があります。
回診につくような感じで日ごろのバイタルサイン、最近の食事・排泄・睡眠・内服の効果など日々の様子、ご家族のかかわりなどを報告し、指示を受け、それを看護師介護士へ申し送ります。

利用者さんについて

突然不穏になって攻撃的になり、そこからのケアを全く受け入れてもらえないことや、暴力的になって噛む、食事をぶちまける、口からぷーっと吐き掛けられるなと色々なことがあります。
身体ケアだけでなく、心のケアを必要とする方が多いです。
コミュニケーションが取れてくると、まるで家族のように人生経験を聞いてアドバイスを受けながら清拭をしたり、反応一つに喜びを感じたりします。
終の棲家となる方が多いので、エンゼルケアまで人の死に直面することが多いです。

ご家族に関してはだんだんと疎遠になっていったり、来ても会わずに手続きだけで帰られる方も結構います。

仕事がやりにくいことは?

仕事量は介護士さんの方が、かなり多いと思います。
看護計画なども立てますが、それを介護士さんに上げて実施するので、理解されず不満を持たれたり、説明する態度が高圧的に見られてしまうことも多いようです。
「看護師はいったい何が大変なの?」と言った意見をもらうこともあります。

アドバイス

介護施設で働く前は「介護士さんが怖い。介護さんが強くて、仲が悪いからやりにくい。」と看護師仲間から聞いていました。
しかし実際に働いてみると、結局は自分の心持ちと姿勢かなと思います。

看護師の意見と介護士さんの意見が合わず、ギクシャクすることはありますが、そんなときは介護士さんの仕事に看護師も立ち返ることが大事だと思います。
総合病院には介護士さんはいなかったので、全部看護師がやってきたことです。
介護士さんがいるからといって、これは介護さんがやればいいと線引きをしてはいけません。
大変そうじゃなくても余裕があれば声をかけ、一緒に行うことでコミュニケーションにもなり、結果的には利用者さんにいいものを返せると思います。
私はそんなやり方でとても働きやすく充実しています。

もちろんまずは看護師として、自分のやるべきことをしっかりやらなければいけません。
しかし総じて看護師の仕事は総合病院より身体的にはらくだとおもいます。

「介護施設スタッフの主役は介護士」

S.Iさん(女性30代)
外科2年

大学病院の消化器外科病棟で2年勤務していました。
高度な医療よりも高齢者ケアに興味をもち、思い切って特別養護老人ホームに転職しました。

勤務する介護施設

公の施設で利用者100人超のユニット型、全室個室の特別養護老人ホームです。
看護師は夜勤専従やパートさんを含めて、13人前後でした。

スタッフとの関わり

最初に実感したのは、「介護施設スタッフの主役は介護士さんである」ということです。
看護師は医務室で仕事をしており、100人の利用者さんの全体(容体の悪い方)を把握していますが、日々ケアに携わるのは介護職員です。
特別養護老人ホームでは具合が悪くても認知症状などから、スタッフにうまく伝えられない利用者さんがたくさんいます。
病院での患者さんの代弁者が看護師であるように、施設では介護士さんが代弁者です。

介護職員との関係が悪いと、利用者さんの変化に気づくのが遅くなることがあります。
私は経歴が決してベテランとは言い難いので、普段のコミュニケーションで関係づくりを大切にしていました。

利用者さんについて

要介護度の平均が4以上で、寝たきりの方がほとんどでした。
意思疎通はほとんどできない方もいますが、お話できる方も多くいます。

日々のケアは介護士さんですが、褥瘡処置や創傷処置は看護師が行います。
もちろん急変もあります。
実際に夜間帯に医療職が自分一人で介護士さんに指示を出しながら、救急車が来るまで対応したこともありました。

特別養護老人ホームは終の住処なので、生活を共にするという感じがあり、行事なども一緒に楽しみました。
利用者さんにとって施設はお家なので、できるだけ看護師とは接点の少ない方が自然であるのかもしれません。

仕事がやりにくいことは

看護的にはこうした方が良いと思ったことも、御家族の気持ちに寄り添うのが先というのが施設です。
また病院転送が必要な急変については、昼間は相談員が家族や病院との調整を行うのですが、夜間は看護師が処置にあたります。
管理医に報告して病院への転送指示を得、家族に意向確認をし、受け入れ先の病院を打診し、看護サマリー(転送先の医師は医師からの紹介状がないため、ここから情報を得ます)を準備しなくてはなりません。

協力病院はありますが、御家族によっては「外来で毎月通っているB大学病院に転送してほしい」などのご希望もあります。
高齢者の誤嚥性肺炎様の症状などであると、3次救急を行っている病院は、単価の高い個室以外では受け入れはちょっと…と言われる現実があります。
しぶしぶ受け入れてもらったとしても、後日医師から名指しで畳み掛ける様にクレームが来たこともありました。

自分の病院経験からもよくわかるのですが、施設から来た患者さんは全介助であったり見守りが必要なために、病院から受け入れを嫌われる印象です。

アドバイス

病院と比べると医療的なことは何もできません。
しかし常駐医師のいない環境下での唯一の医療職として、プレッシャーもありますが、そこは勉強していけば最善の対応が見えてきます。
施設内感染症の予防を考えることもありますし、介護士さん向けの皮膚ケアなどの勉強会を開くこともあります。
決して勉強ができない環境という訳ではありません。

また病院に比べると、看護師の質は平均的には優秀とは言えませんが、優しい方が多いです。
そして病院よりもご家庭と両立している方が多いです。
ぜひ施設看護師の仲間になっていただけたら、と期待しています。

厳しい人間関係もある

D.Hさん(男性40代)
内科病棟3年 整形外科3年 介護老人保健施設通算6年(介護付有料老人ホーム3年 特別養護老人ホーム3か月 デイサービス3か月 訪問看護3年)

東京都内の訪問看護ステーションで勤務しています。
既婚男性。
現在は准看護師ですが、正看護師取得にむけて奮闘中です。

勤務していた介護施設

介護老人保健施設。
看護師5名、介護福祉士20名、ヘルパー5名、施設長1名、副施設長1名、その他当直医師2名

スタッフとの関わり

夜間は介護士2名、看護師1名で勤務となります。
できる介護士の場合は利用者の異常をすぐに発見して、看護師に報告してくれます。
しかし急変などに慣れてない介護士の場合は、看護師に報告が遅れたため危なかったケースもありました。

利用者さんについて

介護度1~5まで、幅広い利用者がいました。
介護度5の方々にはほとんど胃瘻の方もいて、吸引も頻回な方がいました。

介護度1の人は、元気な方が多かったです。
特に印象に残っているのが昔話をたくさんしてくれて、施設で企画した旅行に一緒に行けるくらい元気だった利用者さんです。
楽しい時間を多く過ごしましたが、転倒して骨折後、肺炎になりお亡くなりになりました・・・

仕事がやりにくいことは?

介護士と看護師の関係は、決していいとは言えませんでした。
一部の介護士が「看護師なんて、給料が高いだけで遊んでいるだけ!」と決めつけて、なかなか指示を聞いてくれず、反発ばかりしてくるのです。
嚥下障害がある方へは水分補給はとろみをつけなくてはならないのに、とろみをつけないで介助したり、褥瘡ができているのに体位変換しないなど。
幸い利用者さんの命に係わることはありませんでしたが、人としてどうなのかと疑問を持ちました。

在職中何度か話し合いをしましたが、介護士の看護師嫌いが改善されることはなかったです。
介護士間に派閥があり、女同士の争いも見ていて醜かったですね。
「利用者より自分たち」という態度に耐えられず、私はその後転職しました。

アドバイス

老人保健施設や老人ホームもそうですが、様々な基礎疾患をもった高齢者が入所しています。
医師がいつもいるわけでもないので、幅ひろい知識が必要になってきます。
また適切なアセスメントが必要です。
病院での経験をしっかりつんでから働いたほうがよいでしょう。

あとは人間関係に苦労する覚悟をしておいたほうがいいです。
介護士はキツイ仕事のわりに給料が少ないためか、看護師につらくあたる人もいます。
もし円満な関係が築けたなら、それはラッキーだと思いますね、本当。

まとめ

いかかでしたか?
介護施設の実情が少しわかりましたね。

みなさんおっしゃっているのは介護士さんとの関係。
介護施設の看護師としてやっていくには、介護士さんとうまく付き合っていくことが大切なようです。
病院勤務に比べたら、身体的に楽なことも共通の意見ですね。

「介護施設の看護師」転職の候補にぜひ入れてみてください!