介護老人保健施設は、入居者が自宅で生活できるよう支援する施設です。
通称、「老健」と呼ばれています。
入居者は65歳以上の要介護1~5認定者で、入院・治療は必要ないが、自宅での生活が困難なためリハビリが必要な方です。
3か月ごとに「利用者が自宅に戻れるか」の判定が行われるため、入居者の入所期間は、3か月~半年、長くて1年ほどです。
スタッフは、入居者100人に対して、医師1人、看護師9人、介護士25人、セラピスト1人という配置基準があります。
介護施設の中では、唯一、医師が常駐していて、看護師の人数も多いのが特徴です。
入居者の在宅復帰を目指すための施設ではあるが、「介護療養型老人保健施設(新型老健)」では看取りも行っています。
項目 | 評価 | コメント |
---|---|---|
看護師資格 | 必要 | 医療行為があるため、看護師の資格は必須 |
その他資格 | 不要 | |
臨床経験 | 3年以上 | 未経験でも可能な求人あり |
平均給料 | 日勤のみ平均32万、夜勤あり平均36万 | |
福利厚生 | 独身寮や託児所完備、保養施設など福利厚生の充実した施設もある | |
シフト体制 | 2交代制 | 日勤(9時頃~18時頃)、夜勤(17時頃~10時頃) |
夜勤 | ○ | 夜勤あり
看護師はひとりの場合もある |
残業 | △ | 少ない |
土日出勤 | △ | 休みは4週8休のシフト制 |
オンコール | × | 夜勤があるため、オンコールはない |
求人数 | 〇 | 全国的にあるが、都市部に多い |
正社員 | 〇 | 正社員の募集は多い、非常勤の募集もある |
医療行為 | △ | 医療行為は少ない |
仕事の難易度 | △ | 高度な医療技術は必要ないが、急変時の対応があるため幅広い知識が必要 |
スキルアップ | ○ | 認定看護師、専門看護師など資格取得を目指せる。 |
将来性 | 〇 | 高齢化社会が急速に進んでいるため、将来性は心配なし |
病院への転職 | △ | 医療行為がほとんど無いため、時間が経つにつれ難しくなる |
子育てママ | △ | 夜勤があるため、24時間保育のある施設や日勤のみの求人を探す必要あり |
新卒 | × | 採用条件が臨床経験3年以上の施設が多く、新卒採用は少ない |
ブランクあり | ○ | ブランクありOKの求人多い |
老健ではどんな仕事をする?
老健の仕事は、入居者が自宅で生活できるよう「リハビリ」がメインになります。
看護師の仕事には、リハビリ、基本的な看護業務、観察、日常生活援助、他職種との連携があります。
・リハビリ
リハビリには、セラピストが行う「リハビリ訓練」と看護師・介護士が行う「生活リハビリ」の2種類あります。
「生活リハビリ」とは、食事・入浴・排泄などの日々の生活の中で、ちょっとした動きのトレーニングを行うことです。
セラピストが計画を立て、看護師や介護士が行います。
食事や入浴の介助もただ手伝うのではなく、自分自身でできるように、見守り・支えます。
・基本的な看護業務
バイタルチェックなどの健康管理、服薬管理、経過観察、口腔ケア、褥瘡ケア、医師の補助、急変時の対応、病院への付き添いなどがあります。
・観察
入居者は高齢で体の機能が低下しているため病気にかかりやすく、ちょっとした変化も見逃さないようにしなければなりません。
日常の健康状態の把握は、異常の早期発見につながるため、観察力・判断力が重要になります。
病院の看護と違い、看護師の判断力が必要なことが多く、とても責任のある仕事です。
・日常生活援助
日常生活に関わる食事や入浴、排せつ介助などを行います。
介護士だけが行う施設もありますが、介護士か看護師どちらが行うのか線引きがあいまいな施設も多いです。
・他職種との連携
入居者の在宅復帰を目指すため、医師、介護士、セラピスト、管理栄養士、支援相談員、ケアマネージャーとの連携が大切になります。
老健で働く看護師はどんな人?
40代・50代の経験を積んだベテランナースが多く活躍しています。
理由としては、体力的に不安を感じる看護師や、忙しく働いてきたが少しゆったりしたいと考える看護師が、今までの病棟経験を生かして活躍できるからです。
また、ブランク後、復帰の一歩として医療行為の少ない理由で介護施設を選ぶ看護師も多くいます。
臨床経験が3年以上必要なため、新人ナースや未経験ナースはほとんどいません。
老健で働くメリットはどんなこと?
・看護師もリハビリに関わるため、リハビリの効果が見え、喜び・やりがいを感じることができる
・医師常駐、看護師の人数も多く、一番病院に近い施設なので、看護師として働きやすい
・医療行為が少ないため、ブランクがあっても働きやすい
老健で働くデメリットはある?
・夜勤は医師不在、看護師が一人体制の場合もあるため、急変時の判断がプレッシャーになる
・医療行為が少ないため、物足りなさを感じる、病棟に戻るのが難しくなる
・リハビリがメインのため、最新の医療を行う機会がない
まとめ
老健は、入居者の在宅復帰を目指し、医療ケア・介護・リハビリを行う施設です。
医師・看護師・介護士・セラピストなど、チームで在宅復帰を目指しています。
入居者のADLの向上や、在宅復帰がかなった時は、チーム全体で喜びをわかちあえることができ、とてもやりがいのある仕事です。
入居者ひとりひとりと、じっくり関わることができるため、お年寄りが好きな人や老人介護に興味のある人にオススメの職場です。
また看護師だからといって、看護業務だけを行うのではなく、介護やリハビリも積極的にできる人が向いています。
お役立ちコラム
コラム1「新型老健って?」
介護療養型医療施設の廃止案を受けて、その受け皿として2008年に「介護療養型老人保健施設(新型老健)」が設立されました。
従来の老健との違いは、充実した医療サービス(淡の吸引、胃ろう、経路栄養など)や看取りを行っていることです。
コラム2「従来の老健では、医療サービスや看取りは行ってないの?」
多様化するニーズに対応するため、従来の老健でも医療ケア、看取りケアの必要な人も受け入れている施設が増えています。
施設によって受け入れ態勢が異なるので、看護師の仕事内容も大きく変わります。
コラム3「スキルアップについて」
老健でも病院と同じように、勉強会や外部研修など学ぶ機会はたくさんあります。
全老健主催の外部研修は、老健看護師対象の研修会やリハビリや看取りに関する研修会などがあります。
施設内では、認知症ケア、褥瘡予防のための体位交換や褥瘡ケア、急変時対応などの勉強会を定期的に行っています。
また、認知症看護認定看護師、老年看護専門看護師、ケアマネージャーの資格取得を目指すこともできます。