特別養護老人ホームに転職する看護師が押さえておくべきポイント

特別養護老人ホームは、在宅での介護が難しい高齢者が、介護サービスを受けながら生活するための施設です。
通称、「特養」と呼ばれています。

入居者は65歳以上の要介護3以上の認定者で、入院や治療の必要がない人です。
入所期間に制限がないため、入院や治療が必要にならない限り、施設で最後を迎える人もいます。

「終の棲家」として、入居者はスタッフと長期に関わります。
スタッフは入居者100人に対して、医師(非常勤可)1人、看護師3人、介護士31人などが配置されています。

項目 評価 コメント
看護師資格 必要 医療行為があるため、看護師の資格は必須
その他資格 不要
臨床経験 3年以上 未経験でも可能な求人
平均給料 26万~43万 平均30万
福利厚生  独身寮、託児所を完備した施設あり
シフト体制 1交代 日勤のみ 9時頃~18時頃
夜勤 なし  夜勤時は介護士のみ
残業 少ない
土日出勤 休みは4週8休のシフト制、土日休みの施設もあり
オンコール  夜勤がないため、オンコール対応
求人数  全国的にあるが、都市部に多い
正社員 正社員の募集は多い、非常勤の募集もある
医療行為 医療行為は少ない
仕事の難易度 高度な医療技術は必要ないが、急変時の対応があるため幅広い知識が必要
スキルアップ 認定看護師、専門看護師など資格取得を目指せる
将来性 高齢化社会が急速に進んでいるため、将来性は心配なし
病院への復職 医療行為がほとんど無いため、時間が経つにつれ難しくなる
子育てママ 残業も少なく、夜勤がないので子育てママでも働きやすい
新卒 × 新卒採用は少ない
ブランクあり ブランクありOKの求人多い

特養ではどんな仕事をする?

特養の仕事は、医療行為は少なく、健康管理がメインです。
特別な治療や高度医療はありませんが、看護ケアがとても需要になります。

入居者の苦痛に感じていることや困っていることなど、生活の不自由なことを把握しなければなりません。
できるだけ痛み・苦しみ・不安が少なくなるよう、入居者の気持ちに寄り添うことが大切です。

他には、服薬管理、経過観察、医師との連携、急変時の対応、病院への付き添いなどの仕事があります。
終身にわたっての介護になるため、看取りもあります。
看護師は他のスタッフと協力して、入居者が安心して生活が送られるように努めます。

特養で働く看護師はどんな人?

特養の看護師の平均年齢は49.7歳で、20、30代の看護師は2割、40歳以上の看護師が役8割を占めていて、病院で経験を積んだベテランナースが多いです。

夜勤もなく、ブランクがあっても働きやすいことから、子育て中のナースや、子育てに一段落したナースも多く働いています。

また、お年寄りが好きで老人介護がしたい、高齢者の健康管理・日常のサポートを学びたい、今までの病院経験を生かしたいなど老人看護への関心の高いナースが多く働いています。
常勤医師の配置義務はないため、ほとんどの特養は医師が不在で、定期的に往診に来ます。

特養で働くメリットはどんなこと?

・病院にはない個人を尊重したケアができ、一人一人にゆっくり時間をかけて向き合った看護ができる
・ブランクがあっても、今までの看護経験を活かして働くことができる
・夜勤がなく、残業も少ない

特養で働くデメリットはある?

・医療行為が少ないため、物足りなさを感じたり、病棟に戻るのが難しくなる
・医師不在、看護師の人数も少ないため、緊急時の判断にプレシャーを感じる
・オンコールの負担が大きい

まとめ

特養は、入居者の「生活の場」です。
入居者を長期的にお世話することになるため、中には家族のようなお付き合いになることもあります。

そんな入居者と看取りまでお世話できることに、大きなやりがいを感じることができます。
病院看護にはない心のこもったケアができるので、老人看護に興味のある方にオススメの職場です。

お役立ちコラム

コラム1「オンコールについて」

特養の看護師は夜勤がないため、約9割の特養でオンコール体制をとっています。
オンコール待機の回数は月平均9回程で、そのうち電話対応の回数は、月平均2.4回となっています。
オンコール対応で約8割の看護師が下記の負担を感じています。
・精神的、身体的に休まらないこと
・行動が制約されること
・待機自体が負担になる
・電話対応が負担になる
・呼び出されて、施設へ出勤すること
・翌日の勤務がつらい

コラム2「看取りについて」

入居者とその家族は、自然な看取りを希望する人が多くいます。
そのため、医療行為ができずに、もどかしさを感じる看護師も少なくありません。

特養での看取りは、病院と違います。
入居者とその家族が希望する最期、その人らしく迎えられるかを大切にしています。

コラム3「介護と看護の境界線」

看護師と介護士。
一番の違いは、医療行為ができるかできないか。

医療行為以外の仕事においては、看護師と介護士どちらが行うのかは、曖昧です。
医療行為は、看護師しか行えませんが、入居者のお世話はどちらでも行えます。

しっかりと役割分担されている施設もあれば、そうでない施設もあります。
施設によって、看護師の役割は大きく変わります。