産婦人科で働く看護師が語る 3つのメリットと3つのデメリット

産婦人科に興味がある看護師のみなさんこんにちは!

私は、以前病棟で勤務をしていました。
現在は産婦人科に勤めて5年目、看護師としては8年目になります。
学生の頃から産婦人科に憧れていて、満を持して転職をしました。

産婦人科で働いていると、いろんな人の人生ドラマを見ることができるんですよ。
そして、自分の人生について考えさせられる。
産婦人科ってそんな職場です。

でも、

産婦人科で働くってどんな感じ?
数ある診療科の中から産婦人科を選ぶのはなぜ?

って思いますよね?
ここでは、私が産婦人科に転職をして分かった
”産婦人科で働く3つのメリットと3つのデメリット”をご紹介します。

産婦人科で働く3つのメリット

幸せを感じることができる

産婦人科は、幸せを感じながら働くことのできる診療科です。
なぜ幸せを感じることができるのか?
その理由は3つあります。

新しい命の誕生に関わる仕事
出産はとても神秘的なものです。
ひとつの命が産まれる瞬間に立ち会うということは、普段の生活でなかなか体験できることではありません。
何度体験しても感動的なものです。

産婦人科は「おめでとうございます!」という言葉が飛び交う環境です。
え?そんなの当たり前ですって?
でも、看護師として働く環境の中ではとても珍しいことなんです。
他の診療科では「治療」がメインですし、患者さんと別れる時には「お大事に」と言います。
しかし、産婦人科では「出産」をメインに扱うため「おめでとうございます!」と祝えるんです。
看護師をしていて一番「おめでとう」が言える環境が産婦人科なんですよ。

私は職場で、陣痛が来てから出産するまでどんどん強くなる痛みに耐え、やっとのことで赤ちゃんを産んだお母さん達を見て何度も涙を流しました。
「本当に、よく頑張ったね」という気持ちと共に、「おめでとうございます!」と伝えます。
お母さんもその家族も、医師も助産師も看護師も分娩室にいるみんなが笑顔で、この瞬間「産婦人科で働いていてよかった~!」と幸せに浸ります。

新生児が可愛い
説明するまでもなく、赤ちゃんはとても可愛いです。
業務の中で赤ちゃんの寝顔を眺めたり、柔らかな肌に触れることで優しい気持ちになれます。
赤ちゃんの笑顔を見ていると、こっちも無意識にニコニコ~ってなっちゃいます。
ヘトヘトになって新生児室で赤ちゃんのケアをすると、赤ちゃんの癒し効果で「もうちょっと頑張ろう」なんて思えちゃうんですよ。
赤ちゃんに癒されながら働くことのできることが産婦人科の素敵なところです。

幸せそうな妊婦さんを見ることができる
検診に来て、エコー画像を見て幸せそうに笑っている妊婦さんを見ることは、看護師にとっても嬉しいです。
お腹の中でどんどん成長していく赤ちゃんを見つめる妊婦さんの幸せそうな笑顔は周りも幸せな気分にさせてくれます。
不妊で悩んでいた患者さんが無事、妊娠・出産をされた時には涙を流して喜び合いました。
不妊に悩んで来院された時には想像できないような、はち切れんばかりの笑顔が見られて本当に嬉しかったです。
患者さんと一緒に、心の底から幸せを感じられる仕事だな~と思います。

どうですか?
他の診療科ではなかなか得られない体験ですよね。
これだけでも、産婦人科で働くことが病みつきになるには十分なメリットですね。

幅広く学ぶことができる

産婦人科は、女性が関わる疾患について幅広く学ぶことのできる診療科です。
幅広くって、具体的には?と思いますよね。
具体的に、1つずつ確認してみましょう。

出産について学べる
産婦人科のメイン業務である、”出産”について学ぶことができます。
一言で出産と言っても、学ぶことは様々です。
妊娠検診の介助から、切迫流産・早産・妊娠悪阻、分娩中・手術中の器械出しや外回り、カイザー、母子の健康管理、授乳指導や退院指導、妊婦さんのメンタルケア……

妊娠してから出産までの約10ヶ月間、妊婦さんのケアを続けるわけですから、必要な知識も幅広いですね。

新生児について学べる
産まれてすぐの赤ちゃんは新生児室で預かります。
そのため、新生児の体調管理は看護師の重要な仕事となります。お世話をしながら、異常の早期発見に努めます。
具体的には、体温調節が未熟な新生児のために室温や湿度の管理をしたり、皮膚の赤みや湿疹などがないか観察したり、感染予防をしたりと、新生児の環境を整えます。
また、夜間は母親に休んでもらうために乳児を預かる病院もあります。
その場合、夜間は看護師が授乳介助、おむつ交換を行います。
母親の代わりに新生児のケアを行い、母親に指導をするわけですから、しっかりと新生児について学ぶことができます。

不妊治療について学べる
産婦人科の中には、不妊治療を専門としたクリニックも増えてきています。
一般不妊治療、人工授精、体外受精、顕微鏡受精と段階を踏んで治療が進みます。
治療をしている患者さんは気持ちが不安定になりがちですので、メンタルケアも必要です。
不安で看護師に質問をする患者さんも多いので、しっかり勉強をして答えられるようにしておかなくてはなりません。

堕胎について学べる
患者さんの中には、事情があって産むことができずに中絶をする人や出産を望まず中絶をする人、妊娠したけれど流産してしまう人がいます。
そういった場合には人工妊娠中絶手術を行います。
堕胎してしまった母親は精神的に不安定になりますので、メンタルケアも必要です。
進んで勉強したい、という内容ではありませんが、産婦人科で働く上で必要な知識です。

婦人科系疾患について学べる
女性特有の疾患や女性に多い病気というものが存在します。
女性特有の疾患としては、おりものや生理痛の悩みから、月経不順、不正出血、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫など数多くありますね。
他にも、甲状腺の病気や更年期障害、貧血のように女性に多い病気もあります。
こういった疾患や病気は婦人科の専門です。

がん(ターミナル)
女性特有のがんとして、子宮がん、卵巣がん、乳がんがあります。
治療をする上で、オペや抗がん剤の治療について学ぶことができます。
がんと伝えられた患者さんへのメンタルケアも必要になります。

このように、産婦人科では急性期のオペが必要な患者さんから抗がん剤治療を行っているターミナルの患者さんまでいます。
幅広い患者さんの看護をするために、私たち看護師にも幅広い知識を身につける必要がありますね。

キャリアアップが明確

看護師として働く中で、キャリアアップについては気になるところですよね。
産婦人科は、キャリアアップがわかりやすいのが良いんです。
それでは、産婦人科でのキャリアアップとはどのようなものがあるのでしょうか?

キャリアアップをするなら助産師の資格を取る
看護師がキャリアアップをしようと思ったら、まず認定看護師・専門看護師の資格を取得することが思い浮かびますよね。
でも「実際の現場ではそういった資格が求められていなかった」なんて事が多いと思いませんか?
せっかく資格をとっても、生かして働けない環境の多いこと……。

でも、産婦人科では”助産師”の資格が求められています。
助産師の資格があれば看護師では携われない業務もできますし、仕事の幅も知識の幅も広がります。
もちろん、助産師になるには学校に通い1年かけて看護学校よりも深く、妊産褥婦の心身の変化、分娩技術、育児や母乳指導、ケアの方法などを学ばなくてはなりません。
一緒に働く助産師に聞くと、学校に通う1年はかなりハードだとみんなが口を揃えて言います。
でも病院によっては、助産学校に行くための支援金の補助など進学の援助をしてもらえるところもあり、ひしひしと資格の必要性を感じています。
キャリアアップもできて、職場でも支援・歓迎されるなんて最高ですね!(私は勉強が苦手なので目指していませんけど……)

看護師として産婦人科で働く中で、もっとお産に関わりたい・知識をつけたいと思ったら、助産師の資格を取るという明確なキャリアアップが目指せます。

看護師として働く上で、将来のキャリアは気になりますよね~。
大きな病院で働いていると異動も多いし……。
でも、産婦人科でずっと働きたい!と思ったら助産師になってしまえば、産婦人科から異動させられることはほぼありません。
自分の働きたい診療科でずっと働けるなんて、素敵だと思いませんか?

産婦人科で働く3つのデメリット

余裕がない

一般的に、産婦人科は「楽そう」なんて言われます。
私も、学生時代の同期に「産婦人科は楽そうでいいよね~」なんて言われた事がありました。
その時は、「産婦人科のことを何も知らないくせに!」とめちゃくちゃ腹が立ちました!

産婦人科の看護師は本当に楽なのか?

答えは、”NO!”です。
楽どころか、全然余裕がありません。
その理由を説明しますね。

業務範囲が広い
まず、医師の診察や処置の補助といった面では、産婦人科での業務も他の診療科と同じです。
それ以外にも、妊婦検診の補助や妊婦さんへの指導、授乳チェックや新生児ケア、メンタルケアなど業務は盛りだくさんです。
また、お産があればお産の介助をし、カイザーや人工中絶手術などのオペが入ればオペ介助もしなくてはなりません。
外来業務をして、病棟業務もして、お産やオペの介助もする……フルコースの業務に、身体が空く時間がありません。
私が産婦人科で働き始めた時は、一つ一つ業務をこなしても1日の業務に終わりが見えず毎日途方に暮れていました。(あの頃は先輩に何度も手伝ってもらったなぁ……)

分娩が重なると異常な忙しさになる
お産は日時を選んできてくれません。
そのため、いつ状態が変化するのかもわからず、お産が始まればバタバタします。
状態によっては、緊急手術を行う場合もありますしね。
というか、緊急カイザーなんて、産婦人科では全然珍しくありません。
土日は人手が少ないので呼び出しがありますし、帰ろうとしたら急に陣痛が起こって緊急カイザーで残業なんてこともしばしば。
しかも、なぜかお産って重なるんですよね…‥。
分娩室がいっぱいなのに、患者さんが陣痛で運ばれて来るなんてこともしょっちゅうです。
医師を呼ぶまもなく、陣痛からあっという間に赤ちゃんの頭が出てきてしまったこともありました。
「私って救急病院で働いていたんだっけ!?」と錯覚するほど忙しい時もあります。
でもその分、めちゃくちゃ忙しい時間を乗り越えた時の達成感は最高ですけどね!ランナーズハイみたいになっちゃいます。

夜勤は恐怖の時間
夜勤では、他の診療科で行われる巡回やバイタルチェックの業務に加え、乳児のケアを行います。
何も起こらなければ、行う業務はそれだけです。
他の診療科と、さほど変わりない夜勤です。
ただ、先ほども書きましたが、お産は日時関係なくあります。
夜中でもお産がきちゃうんですよ~~~!
お産が重なると異常な忙しさだと書きましたが、夜勤で人手が足りない時だとそこはもう戦場です。
2人で夜勤をしていて緊急手術になると、1人は器械だしに入ってしまうため、1人で外回りとその他の対応をしなくてはならなくなります。
そんな状態で陣痛が始まった患者さんが来てしまったらと思うと……このプレッシャーは言葉にできない状態です。
私なんて、夜勤の時にはあまりのプレッシャーに一睡もできませんでした。やっと仮眠がとれるようになったのは2年目からです。
そもそも、忙しすぎて仮眠の時間がとれなかったりもしたんですけどね。
あの頃は、夜勤が終わる頃には体力の限界を迎えていました。
本当に、よく耐えたなと自分を褒めてあげたいです。

夜勤に入る時は「今日は何も起こりませんように……」なんて思うんですけど、その願いは叶わないことが多いですね。
どんどん業務をこなして、ある程度慣れるまでは本当にたいへんです。
8年目の今でも「もう辛い!嫌だ!」なんて思うことはしょっちゅうありますけどね……。

理想と現実のギャップが大きい

私が産婦人科で働こうと思った理由は、”命の誕生に立ち会える素敵な職場だから”でした。
もちろんそれは間違ってはいないのですが、今思えば「私は就職前は理想ばかり見ていたんだな~」と。
産婦人科で働き始めてしばらくは、理想とのギャップに打ちひしがれました。
私の後から入った看護師たちも、始めのうちは「こんなはずじゃなかった……」と言っていましたね。
実際、どこに産婦人科への理想と現実のギャップを感じるかを説明させていただきます。

現場では悲劇もたくさんある
産まれてくる命もあれば、失われる命もある。
当たり前のことですが、産婦人科ではどちらも目の前で起こります。
ついさっき新しい命が誕生して喜んでいたのに、次の瞬間、隣の病室で患者さんを看取ることもあります。
それだけではなく、奇形や何らかの疾患を持って産まれる赤ちゃんがいたり、死産や人工中絶手術の介助をする中で、リアリティショックを受けることもあります。
精神的に辛いですし、それに耐えきれず辞めてしまう看護師もたくさんいます。

中期中絶では、子宮口を広げる処置をして陣痛誘発剤を点滴します。
そうすることで、人工的に流産を起こします。
これだけでも辛い仕事ですが、さらには、亡くなった赤ちゃんの体重や身長を計測しなければなりません。
何度経験しても辛いですし、今でも涙を流すことがあります。
そんな思いをしなくてはならないのも、産婦人科で働く看護師ならではですね。

このほかにも、不妊で悩む患者さんがいます。
始めは前向きに治療をはじめた患者さんも、なかなか妊娠できない現実と長期に渡る治療によって精神的に病んでしまうことも珍しくありません。
そのような経過を見守ってきた私も患者さんの妊娠を願っていますが、「今回もダメでした」という結果を知るたびにやりきれない気持ちになります。

このように、産婦人科には幸せなことだけでなく、辛いこともたくさん起こっているのです。
だからこそ、余計に命の誕生の尊さを感じます。
他の科で働いていた時より、今の方が命の重みを感じられています。

助産師との差が辛い
産婦人科と言えば、当然お産に関わる業務ができると思いますよね。
しかし、看護師は基本的に産科領域に関わることはできません。
お産は助産師がメインの仕事だからです。
私の働く病院は看護師も産科に関わる事ができている環境ですが、それでも助産師が赤ちゃんを取り上げている姿を見ると羨ましいと思います。
学生時代の同期が働いている産婦人科では、妊産褥婦さんに関わるのは助産師のみ。
看護師は婦人科がメインで産科にはほぼ関われない上に、助産師から「看護師のくせに……」とバカにされると愚痴っていました。

私は転職するときに、何も調べずにただ憧れだけで産婦人科を選びました。
だからこそ、リアリティショックは大きかったですし、辛すぎて辞めようかと思った事もありました。
しかも、助産師じゃないからお産の時はお手伝い程度のことしかできなくて、なんとなく寂しい気持ちになったこともあります。
事前に下調べをして知っておけば、心構えもできたんでしょうね……。

看護師としての知識・スキルが身につかない

産婦人科は独特な科です。
そのため、どうしても看護師としての汎用性が低くなりがちです。
その点は、産婦人科で働く上で覚悟が必要だと思います。
どのように独特なのかご説明します。

専門性が高すぎる
産婦人科では、NSTや経膣エコー、妊娠検査のような他の診療科では行わない検査をします。
NSTでは、分娩前の胎児の心拍数とお腹の張りをモニタリングします。
胎児の状態を見るものなので、まず産婦人科でしか使いません。
他にも、子宮がん検診や乳がん検診など産婦人科だから行われる検診もあります。
こういった検査や検診の知識は、他の診療科で使うことはまずないでしょう。

ケアする患者さんは健康体
産婦人科に入院されている患者さんの多くは、産前産後のお母さんと赤ちゃんです。
基本的に、妊娠や出産は生理的なものなので、入院している患者さんは特別身体のどこかに不便が生じているということはありません。
そのため、日常生活を援助する病棟看護師が行うような清拭、排泄介助、入浴介助、食事介助といったものが必要ありません。
もちろん切迫早産など絶対安静で入院されている患者さんにはそういった看護が必要になります。
しかし、他の診療科の病棟と比べて必要な頻度が低くなるため、産婦人科の看護師は、看護師が当たり前に身につけるスキルが身につかない・忘れてしまうといった事が起こります。

また、患者さんが健康な若い女性であることが多く、オペ後のモニターで異常のある波形を目にすることはほぼありません。あっても、せいぜいPVCや頻脈くらいです。
産婦人科でずっとやっていくつもりであればさほど気になりませんが、他の診療科で働いている同期と比べると不安になりますし、実際に他の診療科に転職をしたいと思った時には不利になります。
私も、産婦人科に来る前はモニターをバリバリ見れていたのに、今となってはすっかり忘れてしまっています。

産婦人科では身につかないスキルが多いことが現実なんですよね。
私はずっと産婦人科で働きたいと思っているので問題ないですが、それでも学生時代の同期と話をしていると「ああ、看護師として置いて行かれているかも」なんて焦ってしまうこともあります。

「おめでとう!」と言いながら働きませんか?

産婦人科で働く3つのメリットとデメリット、わかっていただけましたか?

メリット
・幸せを感じることができる
・幅広く学ぶことができる
・キャリアアップが明確

デメリット
・余裕がない
・理想と現実のギャップが大きい
・看護師としての知識・スキルが身につかない

看護師として働く上で、辛くない職場というのは難しいですよね。
どんな診療科を選んでも、何かしら辛いことはあるものです。
ではせめて、辛くても頑張れる、やりがいのある職場を選んでみませんか?

産婦人科では、デメリットを覆すような、大きなやりがいを感じながら働くことができますよ。
たくさんの「おめでとう!」が言える産婦人科で、あなたをお待ちしています。