現役看護師が語る 形成外科オペ室の内情 目撃談5選

形成外科では様々なオペが行われます。

医療的なものだとひどいヤケドの植皮や悪性腫瘍で生じた欠損からの再建はもちろん、ところによっては美容的な眼けん下垂や二重まぶたにするためのオペも行います。
それでは、そのオペはどんなふうに行われているのでしょうか。

さっそく、現役看護師の目撃談を聞いてみましょう。

オペ介助の仕事内容

繊細な縫合

R.Bさん(5年目女性)
勤務先:形成外科

初めてオペの介助をしたときのお話です。

私は、この春から形成外科で働き始めた看護師です。
スキルアップをしたくて、4年勤めた外科から異動しました。
形成外科では、内科の知識も必要になると聞いたので、幅広い知識をつけながらオペ介助をするなら形成かな、と思いました
若いうちにスキルを付けておきたかったし、形成外科のケガや先天的な欠損などに対して医療的に見た目を正常にするオペに興味がありました。

形成外科のお仕事は、診察介助に検査介助、点滴や採血、オペの準備や介助など、たくさんあります。
処置が多いのは外科と同じですね。
先輩も丁寧に仕事を教えてくれるし、オペ準備や術前や術後のケアは、外科時代のスキルが活かせました。
そのためか、比較的早い段階でオペ介助につくことができました。

オペ介助では、指示された器具を速やかに医師に渡します。
それはまあ想像していた通りだったのですが。

初めてオペ介助についたとき、医師の技術に感動しました。
それは、切断肢の接着でした。

例えば、工場での作業中に機械に巻き込まれて指を切断してしまった患者さんのオペ。
形成外科ならではのオペではありますが、特に珍しい症例ではありません。
でも、切断された指がくっついていくのを見たとき、不思議な気持ちになりました。
縫合も、繊細で丁寧でした。
何しろ、外科だと3-0ナイロンで4針くらいのところも、形成外科だと6-0プローリンで20針くらいかけて縫いますから。

初めは、神業かと思いました。
「感動しました」と医師に伝えたら「大げさすぎるよ。よくあるオペだよ」と笑われましたが。

その後、頭から転んじゃって額がパックリいってしまった子どものオペ介助をしましたが、縫合はやはり細かくて丁寧でした。

他の科の医師も優秀ですが、縫合が丁寧だとそれだけで他の科の医師より尊敬してしまいます。
オペばかりを気にしてはダメだし、内科方面の勉強もしなくてはなりません。
覚えることはまだまだ山積みですが、医師がオペをスムーズに行えるよう、常に準備万端で頑張りたいと思った出来事でした。

まぶたのオペが人気すぎて…

O.Oさん(27女性)
当時の勤務先:形成外科クリニック

私は、オペ室から形成外科クリニックへ転職した看護師です。
オペ室の経験を生かして働きたかったので、形成外科を選びました。

面接のときは「いろんな疾患を看ることができるよ」と言われていました。
でも、ちょうど私が入職したころから、形成外科より美容外科の患者さんが増え始めてしまって。
偏った症例しか看ることがなくなりました。

標榜をしているのは形成外科ですが、どちらかというと美容外科目当ての患者さんが多かったです。
まぶたのオペが得意な先生だからか、医療処置としてではなく美容面で「眠そうにみられるのがイヤだ」「機嫌が悪そうに見られるので」と眼けん下垂のオペを希望する方が増えてました。

オペ自体は、伸びすぎた皮膚を切る皮膚切除が多かったです。
皮膚をハサミでジョキっと切っていく。
垂れ下がって余分な部位を電気メスで焼き切る。

で、その時私は何をしていたかというと、患者さんの観察ですね。
気分が悪くないか話しかけたり、手を握ったり。
オペの時に緊張する患者さんは多いので、血圧が上がったり下がったり、汗かいたり気分が悪くなったり…と毎回いろいろあるわけです。
だから、そうならないようにリラックスしてもらう必要があります。

転職当初は「そのうち形成外科の患者さんも看れるだろう」という気持ちで入ったのですが、どんどん美容外科中心に患者さんが集まってしまって。
来る日も来る日も眼けん下垂のオペ介助では「形成外科の症例を看たい」という私の気持ちは落ち込むばかりでした。

患者さんとしては、奇麗になりたい気持ちから受診してくれるのだろうと思います。
「まぶたのオペが上手だって聞いて来ました」という方が大半だったので、きっと口コミで広がったんでしょうね。

私としては、ヤケドのオペや、口唇口裂症とか、そういうオペが上手だって口コミで広がってほしかったのですが、そうはいかないですね。
もっといろいろなオペ介助の経験が積みたいので、いいところが見つかったら、すぐにでも入職できるように転職活動を頑張っています。

初めてのオペ介助

R.Iさん(30女性)
勤務先:形成外科

私は、臨床8年になる形成外科の看護師です。
900床の大学病院で新卒からずっと働いています。

内科と外科を経験して、形成外科へ異動になりました。
どちらの知識も必要だったので、タイミングよく異動の話をもらったと思いました。

オペに関しては、少し外科で経験がありますが、オペ前後の患者さんへの説明や、機械の準備だけでした。
オペ介助は初めてだったので、新鮮な気持ちでした。

いくら臨床経験があるとはいえ、オペ介助は0からのスタートだったので、たくさんの器械の名前や器械出しの順番をはじめ、器具の名前を覚えるのも大変でした。
医師によって、器具の呼び方は違うし、クセも違うんだけど、それもすべて頭に入れないとオペの介助できないですから。
常勤の専門医は7人。非常勤は4人。…11通りものやり方を覚えなければなりませんでした。

最初は先輩にも医師にも怒られてばかりでしたよ(泣)
緊張しすぎて渡すべき器具を間違え「これじゃない!!!」と怒鳴られることもあったな…(溜息)。

その時はオペのあと先輩に「ココが外科だったら蹴られてるよ…しっかりしてよ!」と注意されてしまいました。
形成外科は、命に関わるようなオペが無いので怒鳴られるだけで済みます。
そして、必要な器具を渡せないと、医師がイライラしてオペがスムーズに進まず、長引かせることになって、患者さんへの負担が増してしまうんですよね。

それから私は、とにかく頭に器具や器械の名前を叩き込みました。
特にニガテだった針糸を出す作業は、家で納得いくまで練習しました。

その甲斐あって、二週間する頃にはぎこちないながらも、器具はすべて間違いなく渡せるようになりました。
それでも、11人いる先生全員にスムーズな反応ができるようになるのに2か月くらいかかったと思います。

オペ看って、器械出しだけじゃなく、麻酔や外回りの知識も求められます。
覚えるまでがとても大変ですが、覚えたら楽しいですよ。

今では、顔面骨折や、乳房再建、口唇口裂症など様々なオペに携わり、充実した毎日を過ごしています。

患者さんへの気配り

患者さんのメンタルケア

R.Sさん(24女性)
勤務先:形成外科クリニック

私は、内科から形成外科へ転職した看護師です。
うちの形成外科のほかに美容外科も標榜してます。

いわゆる「美容整形」です。

形成外科と美容外科の違いですが、形成外科はケガや先天的な欠損などに対して医療的に見た目を正常にするところ。
形成外科的なオペは、熱傷の瘢痕や先天的な奇形を正常な形に整えていくオペや切断肢の接着はよくあるオペです。

美容外科は、特に医療的なケアは必要なくても、患者さん自身の希望する形に整えていくところです。
美容外科的なオペは、二重まぶたや眼けん下垂などの小規模なオペが多いです。

意外なことに、割と医師が一人でオペをします。
看護師の仕事は、医師の指示した道具や注射器などを渡す、ライトの調節をするくらいです。
急ぎでオペをする時は、縫合の糸をはさみで切るとか、直接介助をします。

オペ介助で大切なことは、患者さんの不安を取り除き、リラックスしてもらうことです。
局所麻酔で、患者さんの意識ははっきりしています。
患者さんが緊張すると、血圧が上ががるので、出血が多くなります。
そうなると、患部が見えにくくなり、オペがやりづらくなるし、術後に腫れや内出血も多く出てしまいます。
だから、オペ室が緊張した雰囲気にならないように心がけているんです。

医師や患者さんの好みの香りや音楽をかけるとかします。
患者さんの変化に気を配り、必要ならば声かけをします。
時には、患者さんの手をずっと握って安心してもらうこともあります。

医師も患者さんにリラックスしてもらうべく、努力しています。
オペしながら雑談して和ませてます。

眼けん下垂のオペでは「今からハサミいれますよ美容師が髪を切るみたいに、左右微調整しながらまぶた整えますね」と会話がニガテな医師でも、必死で患者さんに話しかけています。

術後に患者さんに声をかけてみると「手術のときに香りでリラックスできた」「先生がいろいろ話しかけてくれたので、怖くなかったです」という感想をもらえています。
安心して手術を受けて、リラックスして院内で過ごしてもらえることは、患者さんのメンタルケアにもつながりますし、医療関係者の自信にもつながります。
改めて、患者さんにリラックスしてもらうことは重要だと学びました。

麻酔を怖がる患者さん

B.Sさん(32女性)
勤務先:形成外科クリニック

私は、病棟勤務の後、形成外科クリニックで働いています。
もともと総合病院の形成外科で働いていたので、スキルを活かしたかったし、美容にも興味があったので、転職しました。

医療的な診療が主ですが、美容的な自由診療もしているので、ほくろ除去や二重整形など色々な悩みを持っている患者さんが来ます。

時に、メスを使うオペを怖がる患者さんがいて。
もちろん、カウンセリングして、承諾書はもらうのですが、いざ当日になって、オペ室の中で「やっぱり怖いです!!」と泣き出してしまう患者さんがいるんですよね。

最近では、アテロームの患者さんに号泣されました(苦笑)
「麻酔が怖い」となかなかオペを始めさせてくれない…。
なんだかんだで、30分泣いてました。
「大丈夫ですよ、心配しないで任せてください」と声掛けをするも患者さんは踏ん切りが付かないようで。
時間は待ってくれないので、先生も困り果て「落ち着いてからにしますか?オペの日変えましょうか?来週はどうですか?」と代替え日を提案するも「仕事で今日しか無理なんです~!!」と患者さん。

「でもアテロームは絶対取って欲しい~!!」とのことで、笑気ガスを吸ってもらいました。

こんな風に麻酔を怖がる患者さんがいれば、直前でビビって帰ってしまう人もいるし、ひどいと無断キャンセルもあります。

他の美容外科に勤めている友人にオペの直前でビビる患者さんへの対応を相談してみました。
そうしたら「自分で決めたんだから、潔くオペしましょう、って厳しめに言えば効果がある」と教えてくれました。
それからは、割と厳しく対応しています。
厳しくしたら患者さんにクリニックが嫌われるんじゃないかという不安もありましたが、意外と「わかりました、頑張ります」と覚悟を決めてくれる患者さんが増えてくれて助かっています。

自分の体にメスを入れるのが怖いのはわかりますけどね。

まとめ

形成外科の看護師の働きぶりはいかがでしたか。
オペ看みたいな働き方をすることに驚いた方もいるのではないでしょうか。

そして、形成外科は、美容外科の役割をするところもあることがお分かりいただけたと思います。
働く場所は、総合病院や大学病院の形成外科から、形成外科や美容外科を標榜するクリニックまでたくさんあります。
是非、自分に合った職場を見つけてくださいね。