形成外科は、ケガや生まれつきの皮膚の異常・欠損に対して治療をするところです。
患者さんは患部に対してナーバスになっていることが多いです。
形成外科の看護師は、他科以上に患者さんのメンタルケアが必要になってきます。
また、内科と外科両方の要素を持ち合わせている科でもあります。
スキルアップにはもってこいの科ですよ。
では、実際はどんな人間ドラマが繰り広げられているのでしょうか。
少し覗いてみましょう。
形成外科ってどんなところ?
形成外科の仕事内容
A.Eさん(25女性)
勤務先:形成外科
私は、大学病院に勤務している看護師です。
ベッドは900床あります。
職場は形成外科外来で、12人の専門医と共に働いています。
内科で3年働き、スキルアップしたくなってきたところに、形成外科への異動を師長に持ち掛けられました。
その時ふと「形成外科ってどんなところだっけ?」と疑問がわいてきて。
ネットで少し調べてみたら、見た目に関することすべてを扱うってあったのですが。
美容形成とどう違うか戸惑いませんか?
私はパソコン見ながら戸惑いました(笑)
形成外科は、体表面の再建や修復をする科です。
病気やケガに対して、腫瘍切除や大きな火傷への植皮のように「変形したところを正常な形に戻す」「傷あとをきれいにする」といった治療をするところです。
一方、美容形成外科は、特に治療の必要はなくても「もっと胸を大きくしたい」「一重まぶたを二重にしたい」など、患者さんの美の実現をお手伝いする科です。
オペ看にも興味があったので、改めて形成外科の異動を受けました。
仕事内容
診察や検査の介助、注射や採血などの看護技術からオペの準備・介助に医療レーザーの補助まで多岐に渡ります。
診察介助では、患者さんを押さえます。
ケガでの受診も多いため、患部の痛みで診察中に患者さんが動いてしまうことがあるためです。
中には、小さなお子さんもいるので、泣く子をあやすこともあります。
オペ介助では、縫合はもちろん、レーザー照射やマイクロサージャリーを行うこともあるので、オペ看と同じくらいのスキルが求められます。
それから、患者さんのメンタルケアも大切。
患者さんは、体の欠損部分が正常に戻るかとても不安になっています。
「本当に指が繋がるのかなあ…」「私の胸、元通りになる…?」なんて結構マイナスなことをくら~く言われる。
そんな時は自信満々の笑顔で「もちろん大丈夫ですよ!!」と言葉をかけることが必要です。
治療をする側の元気がないと、患者さんに「本当に大丈夫なのだろうか?」と思わせてしまうので。
あと、内科と外科、両方の科の知識が必要なので、勉強も大事な仕事ですね。
結構量が多いですよ。
メリット
スキルアップできることです。
内科・外科、どちらの経験があっても、勉強する内容の多さは変わらないです。
内科的には投薬方針が、外科的には失われた組織の再建が勉強になります。
ずっと形成外科で働いていきたい人はもちろん、診療科を移っても役に立つスキルが身につきます。
デメリット
メンタルケアが難しいことです。
大きな外傷や生まれつきの奇形などで辛い思いをしている人が多いです。
他人から言われた何気ない言葉がきっかけで、社会との関わりに恐怖を感じて引きこもりになってしまうケースもあるほどです。
そのため、メンタルケアがとても重要です。
ですが、メンタルケアは、人生経験が長くないと、かける言葉に困るシーンが出てきます。
そこは勉強だけではなかなか上手にできません。
人一倍神経質な患者さんや、複雑な縫合でどうしても傷あとが残ってしまう方への声掛けなど、特に困ります。
私は初めのうちに、後々の参考にするため、先輩に頼んで一緒に声掛けをしてもらいました。
やりがい
患者さんにお礼を言ってもらえることが多いことです。
組織の再建ができて、退院する時、患者さんに喜んでもらえることです。
見た目で傷あとがキレイになっていくので「看護して治っていく」実感につながりやすいです。
チームで働くことが多いので、チームのみんなで達成感を分かち合えるのも良い環境だと思います。
透析導入の指導
内シャントの形成
T.Bさん(27年目女性)
当時の勤務先:形成外科
私は、病棟から転職して、形成外科で働き始めました。
結婚の予定ができたため、退職しようか悩んでいるときに誘われて、近くの形成外科クリニックへ転職しました。
形成外科って、てっきり顔の気に入らない部分を作り変えるとか、そういうことをすると思っていたんです。でも、それは美容整形外科ですね。
正しくは、先天的な奇形とか顔面骨折みたいに、他人から見たら驚かれてしまうような形の部位を一般的な形状に戻すことをする診療科でした。
仕事内容としては、診察や検査の介助、注射に点滴の準備や処置、とまあ一般科とそれほど変わりはないですね。
私の職場では、内シャントの形成を積極的に行っている職場でした。
なので、常時数人の患者さんが、透析導入のために入院していまいした。
私は、シャントを形成する患者さんへ必要な情報を提供しつつ、守ってもらいたいことを指導しています。
シャントの形成後はすぐに透析を開始するので、シャントの形成前にシャントと透析開始について、両方の指導をします。
必要な情報として、術前にはシャント音やスリルの確認方法を伝えます。
手術当日の入浴不可とか、食事は普通に摂れて、院内の行動は自由とか。
術後には傷の保護剤がはがれてたら看護師に伝えてもらうこととか。
手術の翌日には退院できるし、入浴可。出血がないなら把握運動始めます。
守ってもらいたいこととして、シャント部に負担をかけないような生活をしてもらうように伝えます。
例えば、シャントを形成した腕で重いものを持たない、圧迫される衣服を着ない、腕枕をしないなど気を付けて生活してもらうことが必要です。
そうそう、女性によくみられる、バッグを腕にかける。あれは完全アウトです。
形成したシャントがつぶれてしまったら、透析で使えなくなってしまうからです。
そうなると、再度の手術が必要になり、患者さんへ大きな負担をかけることになります。
と、こんな感じで指導をしています。
今はまだ説明しかできません。
でも、今後はどんな看護を学んでいけるのか、楽しみです。
形成の縫合に耐えられなかった
耐えられないオペ
O.Uさん(38女性)
当時の勤務先:形成外科
ほんの一時期形成外科に勤務していた看護師です。
子どもが保育園に入れた時で、パートで復職しました。
3年ぶりの職場でした。
面接ではオペ介助もあると院長から話がありました。
オペ介助はギネで経験があったので、特に気にもせず復職しました。
ところが、勤めて2週間も経たないうちに、辞めてしまいました。
私がギネにいたのは5年で、オペは経験豊富でした。
その間、帝王切開の縫合も何百回と見てきました。
もちろん、具合が悪くなることはなくしっかりオペの介助をしていました。
でも、形成外科でのオペでは気分が悪くなることが多くて…
オペ介助していると、毎回サーッと血の気が引いていくのです。
一度、耐えきれずにオペ直後にトイレに駆け込み、戻してしまったこともありました。
どんなオペだったかというと、眼けん下垂や、切断した指の縫合オペでした。
眼けん下垂は、伸びてしまったまぶたの裏側の結膜を切って縫うのですが、どうもその光景を見るのがニガテで。
切断した指が縫合されていくのも「切り落とされたものが再びくっつく」のを見るのがなぜかダメでした。
オペ以外の仕事では何ともないのです。
ただ、オペだけはどうにも耐えられないかも、と思うようになっていました。
せっかく復職できたから、できれば続けたかったです。
一日や数日で辞めるひとと同類になりたくないし、ギネではしっかり頑張れたことを科が違うだけで「できない人」と思われるのがイヤで。
思い切って、以前美容整形で働いていた先輩に相談しました。
そうしたら「あなたもか」と言われました。
なんでも、先輩はオペに慣れているハズなのに、気持ち悪くて見てられなかったから辞めたそうです。
給料は他の科の倍だったのに…。
科によって向き不向きがある、と聞いたことはあります。
わたしは正直「向かない科」って言っている人は甘えや怠けで言っているものだと思っていたので、自分がその立場になったことが衝撃的でした。
それから、私にとって今の職場が本当に必要なのかを真剣に考えました。
出した結論は、退職でした。
自分に向いてない職場で体調を崩してまでする仕事ではないと判断したからです。
院長にはオペ中に気分が悪くなることを正直に話し、退職しました。
今は、またギネで働いています。
オムツをめぐる患者さんトラブル
自分で歩いて欲しい
H.Gさん(30女性)
勤務先:形成外科
私は、形成外科に勤務しています。
患者さん対応で悲しくなったことがありました。
ある患者さんが、足にできた傷の炎症で入院してきました。
当初は発熱していたし、抗生剤の点滴もしていて。
患部の炎症や感染もひどくて歩行困難だったので、万一を考えてオムツをつけていました。
でも、容態が安定してからもオムツの要求が止まりませんでした。
この患者さんは結構な肥満で、糖尿病だったため、ADLのためにもできるだけ歩いてもらいたいのに。
なぜオムツが必要なのかを聞くと、「起きてトイレに行くのが面倒」という理由でした。
開いた口がふさがりません。
ご家族にも「褥瘡や感染症のリスクがあるので、歩けるなら歩くように説得できないか」と頼んでも「足が治ってないのに夜中に歩かせるの?」と言われる始末。
何か起きた時に怖いので、主任に相談して再度患者さんとご家族にリスクの理由を説明してもらったのですが、効果ナシ。
せめて、ポータブルトイレを使うように患者さんを説得してもらえないか、ご家族に相談するも、「面倒」だといわれ。
患者さんのADLが低下して、昼夜問わずオムツを使わざるをえないことになる方がよほど面倒なのに。
主任もあきらめモードで、「オムツ出しましょう」との結論になりました。
もちろん、記録はしっかり残しました。
オムツを着用するリスクを説明したうえで、患者さんにも同意してもらっていることを記録すると伝えて。
後からADLが落ちたとか、病院や担当看護師のせいにされるかもしれないので。
真剣に看護しているのになあ。
でも、こういう患者さんへの対処も必要です。
溜息が出そうですが、対処を学べてよかったとするべきなのでしょうね。
まとめ
4人の先輩看護師の体験談を紹介してきました。
いかがでしたか。
形成外科では色々な技術を学べる半面、内科と外科両方の要素を持ち合わせている科なので、勉強量も多くて結構大変です。
そして、患者さんのメンタルを支えることもかなり重要になります。
向き不向きもある科です。
他の科のオペで耐えられても、形成外科では耐えられないこともあるかもしれません。
そして、ADL向上のために患者さんのご家族とも話し合いが必要なこともあるところです。
しかし、形成外科で経験を積むことができれば、形成外科を極めるにしても、他科へ転職するにしても、将来必ず役立ちます。
ぜひ、形成外科の募集を探してみてください。